研究課題/領域番号 |
24593526
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研究機関 | 桐生大学 |
研究代表者 |
田邊 要補 桐生大学, その他部局等, 講師 (50515319)
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キーワード | ISMI尺度 / 自己スティグマ / 信頼性 / 妥当性 |
研究概要 |
2003年にリッシャーらが、精神障がい者自身のスティグマである内面化したスティグマ(自己スティグマ)を測定するために、「精神障がい者の内面化したスティグマ尺度」を開発した。しかし、その日本語版は日本には存在しない。「精神障がい者の内面化したスティグマ尺度」の日本語版を作成し、その信頼性と妥当性を検討することを研究の目的とした。今年度実施した概要は次の通りである。 1.日本語版「精神障がい者の内面化したスティグマ尺度」の「信頼性・妥当性の検討」を行った。1)尺度の信頼性はクロンバックのα係数の算出による内的整合性の検討と、合計得点間の相関をPearsonの相関係数の算出による再テスト法の検討によって信頼性の検証を行った。妥当性の検討は、ISMI尺度とベックの抑うつ評価尺度(BDI)、ローゼンバーグの自尊心尺度(RSES)、そしてエンパワーメント尺度(ES)との相関によって検証した。スティグマ抵抗サブスケールを除いた4つのサブスケールについて、最尤法によるプロマックス法回転で因子分析を行った。統計処理にはSPSS Statistics 21.0を用いた。その結果、いずれもオリジナル英語版と同じような値が得られた。2)先行研究や得られた結果等に基づいて、推敲しながら信頼性と妥当性の検討をし、論文を作成した。ことあるごとに、群馬大学大学院教授林邦彦先生や北里大学保健衛生専門学院藤田勇先生の協力を得た。 2.作成した論文は6月に行われた日本精神保健看護学会第23回学術集会に応募・採択され、口頭発表をした。 「精神障がい者の内面化したスティグマ尺度」の日本語版が出来れば、日本における精神障がい者の内面化したスティグマが測定でき、何故、回復が遅れているのかを見つけるための1つの要因を探ることができる。また、諸外国のスティグマ研究との比較も可能になり、精神障がい者の回復の一助になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際に調査を行い得られたデータを科研費で購入したSPSS Statistics 21.0を用いて、自分で研究できる時間があれば、いつでも自分の研究室で統計処理を行うことができた。このことは時間的な節約にもつながり、研究が順調に進んだ。 また、お互い時間の制限はあるが、「日本語版『精神障がい者の内面化したスティグマ尺度』の信頼性と妥当性」の論文を作成する時、ことあるごとに研究協力者からの協力が得られた。一人で考えていると限界もある。いろいろな人の意見を聞くことで論文の内容も深まっていく。 今述べたことが、今年度の研究が順調に進展している大きな要因である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、オリジナル英語版の著者との面会や論文を海外の雑誌に投稿するための翻訳依頼および投稿などを行いたい。海外の雑誌に論文がアクセプトされたら「日本語版『精神障がい者の内面化したスティグマ尺度』」のリーフレットを作成し、医療機関や研究機関に無料配布し、少しでも多くの人に知ってもらうとともに実際に使用していただきたい。そうすることで、精神障がい者の回復の一助になると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
「Internalized Stigma of Mental Illness (ISMI) scale」の日本語版の作成や実地調査などが当初計画よりも進展があったため、前倒し支払い請求をして認められた。しかし、海外の雑誌に投稿したがリジェクトされたため、オリジナル英語版の著者との面会やリーフレットの作成などが思うように進まなかったためである。 ①オリジナル英語版の著者との面会のための旅費や論文を海外の雑誌に投稿するための翻訳手数料として使用する。②海外の雑誌に論文がアクセプトされたら「日本語版『精神障がい者の内面化したスティグマ尺度』」のリーフレットを作成するために使用する。③リーフレットを医療機関や研究機関に無料配布するための郵送代として使用する。
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