研究課題/領域番号 |
24593531
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
柳原 清子 東海大学, 健康科学部, 教授 (70269455)
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研究分担者 |
井上 玲子 東海大学, 健康科学部, 准教授 (80349414)
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キーワード | 家族-医療者コンフリクト / 家族間コンフリクト / 援助的会話スキル / 解決志向型支援調整パターン4 / 家族意思決定支援モデル |
研究概要 |
これまでコンフリクトの様相として「家族-援助者関係パターン10」と「家族間関係パターン7」を開発してきた。平成25年度はその介入方法を分類し、「解決志向型支援調整パターン4」を作成した。それは、コンフリクト場面の大枠から「アセスメントと介入」を分類したもので、4パターンが見出された。1つは、大きな出来事に衝撃を受け危機的状況にある『茫然自失型』で、寄り添う支援型での急性悲嘆ケアが求められる。2つ目は我流を押し通しその場をしのぐ『先送り型』であり、3つ目は言い訳とちぐはぐさが目立つ『言い訳型』である。これらは、家族リジリエンスを探索しながらの後押し支援や、資源を追加して役割を明確にしていく支援が必要となる。4つ目が、医療者に過度な要求や怒りをぶつけてくる『要求・怒りぶっつけ型』で、そこには、傾聴で理解のニーズを充足しつつ交渉型のスキルを組み合わせて行く方法が有効である。 この4パターンの内、『先送り型』および『言い訳型』での、対象者の文脈(認知と行動)をとらえた上での背中を押す支援が、専門的な「意思決定支援」である。現在の臨床では、治療をめぐる意向のズレや退院をめぐるクレームがあるが、この現象は患者・家族間での方向性を決めることができない、あるいは医療者とのズレがあるという、合意形成上(意思決定上)のトラブルであることから、コンフリクトの調整とは、意思決定支援であるとも言いかえることができる。 そこで2つ目の課題として、研究者が作成した家族の「意思決定モデル」のアセスメント精度をあげ、さらに介入方法について加え、新たに「家族意思決定支援モデル」を作成した。 さらに看護師の「意思決定支援スキル」の状況を調査した。結果として、看護師は情報はとらえられるが、立場の異なる複数人の意向をすり合わせる技(選択肢からチョイスすることを後押しする働きかけ)が不足していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、コンフリクトの解決を目指しての、関わりの「コミュニケーションスキル」をロールプレイ等を通して開発する予定であったが、How To的なスキルでは、看護師の対応スキルとして効果は乏しいことが予測された。そこで方向を修正し、介入の方法論を分類し「解決志向型支援調整パターン4」および「家族意思決定支援モデル」を作成した。新たに作成したモデルは、2つの国際学会で発表し反応を確認した。海外においては、医療システムが異なり、また家族内や医療者とのコンフリクトを担当するのは主としてソーシャルワーカーや心理療法士たちであることもあるが、家族看護してスキル開発をめざしていることには関心と理解が得られた。また、国内で多くの研修を手掛け、学会でワークショップ等をおこなってきたが、そこでの看護師の関心と反応は大きなものがあった。 以上から、研究は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はコンフリクトへの介入スキル開発として、最終段階に入る。当初の計画では、関わりのスキル(会話の技)を研究会や大学院の演習等で、ロールプレイを通して開発する予定であったが、一般化が難しいことが予測される。そこで、家族看護のスペシャリストである「家族支援専門看護師(以下「家族CNS」)の協力を得て、彼らの家族面接場面での会話を録音し、それを記述したプロセスレコードの分析を通して「援助的会話スキル」の開発に取り組む方向とする。 研究方法として、質的記述的研究である会話分析法の一種である「プロセスレコード」分析を使って、「注目と傾聴」「質問」「言い換え」「感情の反映」「是認」等のスキルがどのように入っているかを探索し、その上で「解決志向型支援調整パターン4」との関連を分析する。具体的には、ケースごとに会話の流れと使っている会話スキルを分析し、ケースの特徴を集めてパターン化する、事例分析-パターンマッチグ法を用いていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
人件費の内、データ打ち込みなどの作業費と専門的知識の供与が予定よりも、軽費で済んだため。 26年度は、データ分析とこれまで積み重ねた研究の広報活動が中心となるため、予定通りデータのテープおこし・データ記述・整理等の作業費と、学会発表、論文投稿(英文翻訳)が予算執行の中核となる。
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