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2014 年度 実施状況報告書

アルコール依存症の回復支援―1次嗜癖の諸相の解明と効果的な看護支援の構築―

研究課題

研究課題/領域番号 24593537
研究機関東京医療保健大学

研究代表者

伊藤 桂子  東京医療保健大学, 看護学部, 准教授 (40600028)

研究分担者 安田 美弥子  東都医療大学, ヒューマンケア学部, 教授 (30158000)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードアルコール依存症 / 回復過程 / 生きづらさ / 1次嗜癖
研究実績の概要

本研究では,生育歴によって形成される1次嗜癖が2次嗜癖であるアディクションを成立させているという概念を提唱しており,アルコール依存症者の「生きづらさ」は1次嗜癖から生じるものであると考える。
そこで,アルコール依存症者の生きづらさの存在と1次嗜癖の回復過程を明らかにするために,自記式質問紙留置調査法による量的研究を行った。研究対象は,関東甲信越全都県のアルコール依存症の自助グループに参加し回復を目指して取り組んでいる男性アルコール依存症者である。また,コントロール群として,同地域の30-70歳代の健康な男性を対象とした。分析方法は,アルコール依存症者群およびコントロール群の各項目について,単純集計,基本統計量(平均値,標準偏差等)の算出を行い比較した。また,アルコール依存症者を断酒期間で4群に分けて,統計的な分析を行った。
今回対象としたアルコール依存症者の半数以上が生きづらさを抱えており,コントロール群よりも生きづらさを強く感じていた。アルコール依存症者の「生きづらさ」は,アルコール依存症者の他者評価への過敏な傾向と他者を理解する力と自己を承認する力が低く,孤独感の欠如,認知の歪みが強いという形で現れることが特徴であった。これらはアルコール依存症者特有の「生きづらさ」であり,幼い頃の愛着欲求の充足困難と自我確立の阻害に起因するという依存の精神病理の傾向である一次嗜癖の存在を証明できたと考えられる。アルコール依存症者の生きづらさは,断酒期間が長くなると低減し,生き方への満足感と自己肯定感,他者を理解する力が高くなるが,孤独感を感じるようになることが明らかとなった。
これまでに明らかとなった結果を学会や勉強会等で医療者に報告し、効果的なアディクション看護支援を検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究の目的は①アルコール依存症回復者の1次嗜癖の回復過程の諸相と回復像を明らかにする,②アルコール依存症の1次予防・3次予防に効果的なアディクション看護の支援を明確にする,であり,現在のところアルコール依存症の1次嗜癖と回復過程を明らかとした。この研究結果を医療者に報告し効果的な支援について検討したが,入院治療施設の医療者だけでは長期的な支援を具体的に検討することは不十分であり,対象を広げる必要性が生じた。このため,本研究の達成度は8割程度である。

今後の研究の推進方策

これまでの研究結果から,アルコール依存症回復者に対する効果的な支援・アルコール関連問題予防対策を構築する。
地域でアルコール依存症治療に携わる医療者・当事者・家族に向けた勉強会等を企画し,研究結果から治療施設や地域での医療的な支援導入の方向性を検討する。そのうえで,1次嗜癖の回復を支援する看護の要点をまとめ,回復期間や回復状態に応じて必要な介入を明確にする。また,地域における看護介入方法を具体的にあげる。
研究結果は、国内外の学会や学術誌で公表する。

次年度使用額が生じた理由

本研究では,これまでにアルコール依存症の1次嗜癖と回復過程を明らかとした。この研究結果から,アルコール依存症回復者の1次嗜癖に対する効果的な支援を検討するために,医療者の意見を募って回復支援の方向性を検討したが,入院治療施設の医療者だけでは長期的な支援を具体的に検討することは不十分であり,対象を広げる必要性が生じたため研究計画を再検討した。
さらに,研究結果を学術誌および学会等で公表することが遅れたため,必要経費の未使用が生じた。

次年度使用額の使用計画

地域でアルコール依存症治療に携わる医療者,当事者,家族に向けた勉強会等を企画し,研究結果から治療施設や地域での医療的な支援導入の方向性を検討する。勉強会参加者の意見を質的に分析し,1次嗜癖の回復を支援する看護の要点をまとめ,回復期間や回復状態に応じて必要な介入を明確にする。複数の専門家の協力を得て,質的な分析の信頼性や妥当性を確保する。勉強会企画準備などの旅費や勉強会資料,会場費,分析における研究協力費(交通費含む),会議運営などの諸経費に研究費を使用する予定である。
研究結果は国内外の学会や学術誌で公表するため,その諸経費に研究費を使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] アルコール依存症の回復過程における「生きづらさ」‐家族背景と心理的傾向の観点における男女の差‐2014

    • 著者名/発表者名
      伊藤桂子,安田美彌子
    • 雑誌名

      性とこころ

      巻: Vol.6 ページ: 94-108

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] A study on the “difficulty of life” in the recovery process of alcoholism in Japan2014

    • 著者名/発表者名
      Ito Keiko
    • 学会等名
      16th International Society of Addiction Medicine Annual Meeting
    • 発表場所
      Yokohama
    • 年月日
      2014-10-06
  • [学会発表] アルコール依存症者の心理的傾向と一次嗜癖の解明 -回復過程に伴う「生きづらさ」からの考察-2014

    • 著者名/発表者名
      伊藤桂子
    • 学会等名
      第13回日本アディクション看護学会学術集会
    • 発表場所
      愛知
    • 年月日
      2014-09-21
  • [学会発表] アルコール依存症の回復過程における「生きづらさ」‐家族背景と心理的傾向の観点における男女の差‐2014

    • 著者名/発表者名
      伊藤桂子
    • 学会等名
      第6回日本「性とこころ」関連問題学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2014-06-28

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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