研究課題/領域番号 |
24593545
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
松尾 善美 武庫川女子大学, 健康運動科学研究所, 教授 (90411884)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 要介護認定者 / 呼気筋トレーニング / 呼吸機能 / 嚥下機能 |
研究概要 |
呼気抵抗負荷トレーニング(expiratory muscle training: EMT)は、呼吸筋力や咳嗽能力のみならず、嚥下機能にも影響を及ぼす可能性が報告されており、注目されている。しかし、これらは呼気圧負荷時における舌骨上筋群の活動を表面筋電図により検討されており、呼気負荷圧時にMRI画像を用いて形態学的側面から検討された報告はこれまでにない。本研究はMRIを用い、呼気負荷圧時の舌の形態学変化について比較検討することを目的とした。 健常者男女30名(男性15名・女性15名、平均28.9歳)を対象とし、呼気負荷圧(maximal expiratory pressure: MEP)を加えた時の矢状面における舌面積の形態変化を測定した。形態変化はMRIによるT2強調画像を用いて背臥位で撮影した。撮影は最大呼気抵抗圧の10%MEP・30%MEP・50%MEPを水圧にて加えた時に実施し、安静時と比較した。結果、10%MEPから50%MEPへと舌面積は順次、負荷圧が強くなるとともに有意に縮小した。変化率は、男性で10%MEPでは-13.0%、30%MEPでは-16.4%、50%MEPでは-18.7%、女性で10%MEP では-16.2%、30%MEPでは-18.6%、50%MEPでは-22.0%であった。負荷圧毎の変化率の性差については有意差がなかった。よって、健常者の舌では50%MEPまで呼気負荷圧が増すと形態学的には安静時より縮小し、より舌筋の強い収縮が得られることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費申請書類における当該年度の計画は、「健常成人約10名を対象とし、健康保険鳴門病院のMRI検査により、呼気筋トレーニングが舌骨筋の活動に寄与する形態学的変化を通して至適呼気圧の決定および呼気圧負荷が嚥下機能改善に資する機序について検討する。MRIによるT2強調画像を用いて、各被験者における最高呼気圧の各種水圧を用いた呼気圧負荷を加えた際の咽喉頭レベルでの舌骨筋の活動に寄与する上位2種の呼気圧を決定する。」としていた。よって、これまでの研究結果により、30%MEP・50%MEPの呼気筋トレーニングが咽喉頭レベルでの舌骨筋活動に寄与する上位2種の参考呼気圧となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は「介護保険サービス利用中の要介護認定者に舌骨筋群、腹背筋群の表面筋電図検査を用いて、2種の呼気圧による呼気筋トレーニングを効果的に実施するための姿勢・肢位を検討する。2種の呼気圧と在宅で可能でかつ効果的な座位と頚部・体幹の肢位について表面筋電図より得られた正規化した電位より検討し、呼気筋トレーニングに効果的な座位と頚部・体幹の肢位を決定する。」、平成26,27年度は「徳島県に在住し、介護保険サービス利用中の要介護認定者に4週間在宅での呼気筋トレーニングを実施し、嚥下機能に及ぼす効果について介入前後での反復唾液嚥下テスト、舌圧、口唇閉鎖力、呼吸機能検査、呼吸筋力の結果からその効果を検討する。なお、本研究の主旨を説明し、同意の得られた症例を対象とする。呼気筋トレーニングは、決定した至適負荷圧と姿勢・肢位での呼気圧負荷で先行研究に準じて1セット5回、5セットで1日2回、週5回の介入群と最高呼気圧の5%の負荷で同様の回数での対照群に無作為に割り付け、休止期間を設けてクロスオーバー試験を行う。開始前に呼吸機能、咳嗽能力、呼吸筋力、反復唾液嚥下テスト、舌圧、口唇閉鎖力測定を行い、開始後は毎週呼吸機能と呼吸筋力測定を行う。測定前には、方法と手順について十分説明し、事前練習を数回行う。なお、2回目以降の設定圧は、再評価時に得られた最高呼気筋力値に応じて、負荷圧の再調整を随時行う。呼気筋トレーニング期間は4週間とする。トレーニング開始前に2回測定を行い、トレーニング開始後は1週間間隔で測定を4回行い、計6回の測定を行う。呼気筋トレーニングが嚥下機能に及ぼす効果について群間検定を行い、呼気筋トレーニングの効果を検証する。」と研究を推進する。以上の研究結果により、要介護認定者に対する呼気筋トレーニングプログラムを開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
測定用の筋電図アンプ、圧トランスデューサ・アンプ、心電図アンプとその消耗品であるリード線電極および呼吸訓練器、事務用品の購入を予定している。
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