研究概要 |
呼気筋トレーニング(EMT)は嚥下機能に好影響を与えるとの報告が散見される。健常者では座位より仰臥位で嚥下時の舌骨上筋群は活動するが、在宅療養者での同様の報告やEMT実施時の姿勢が舌骨上筋群に及ぼす影響に関連する報告は見られない。本研究は,在宅療養者に対してEMT実施時の至適な座位姿勢および至適呼気圧負荷の違いによる舌骨上筋群の活動を比較することによって,至適な姿勢および呼気負荷圧を決定することを目的とした。 対象は,嚥下障害を有せず、座位保持が可能な在宅療養中の要支援・介護認定者である13名(男性6名・女性7名,74.6±8.1歳,BMI22.1±2.4,要支援6名・要介護7名)であった。まず、最高呼気筋力(MEP),舌圧を測定した。次に,リクライニング椅子を使用し,端坐位,30°座位,45°座位,75°座位の4肢位で、対象者のMEPに対する30%MEP,50%MEP,75%MEP,100%MEPの圧でEMTデバイスによる呼気負荷を実施し,呼気開始からの1秒間の舌骨上筋振幅をroot mean squareに変換した後、座位姿勢と呼気負荷圧の二要因による二元配置分散分析を用いて解析し,有意水準をp<0.05とした。結果、MEPと最大舌圧およびPCFは有意に正の相関(r=0.60,0.71)を示した。座位姿勢を変えても舌骨上筋の筋活動に有意差はなかったが,30%MEPより75%MEP,75%MEP より100%MEPで有意に舌骨上筋の活動は増加した。EMTは座位が自立していない在宅療養患者にも適用可能であり、呼気圧負荷はより大きい程舌骨上筋の活動を賦活するが、患者のアドヒアランスを考慮することが必要である。
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