研究実績の概要 |
前期高齢者の低筋肉量と肥満による影響を明らかにする目的で研究を実施した。成人期から後期高齢期に移行する前期高齢期の身体組成の変化に対応した課題を明らかにすることで、後期高齢期に向かう前期高齢期での介護予防の支援を検討できる。 具体的には、特定健診受診者を対象に歩行速度の測定と身体組成の測定を行った。身体組成はBIA法で測定し、歩行速度は5mの通常歩行速度を測定した。 男性の低筋肉量群での歩行速度は1.24(0.18)m/s、正常筋肉量群では1.31(0.21)m/sと有意に低筋肉量群の歩行速度が遅かった(p=.042)。高体脂肪率群の歩行速度は1.27(0.20)m/s、正常体脂肪率群では1.33(0.20)m/sと有意に高体脂肪率群の歩行速度が遅かった(P=.047)。女性では、低筋肉量群と正常筋肉量群の歩行速度に有意な違いは見られなかった(P=.7)が、高体脂肪率群の歩行速度は1.33(0.21)m/s、正常体脂肪率群では1.42(0.21)m/sと有意に高体脂肪率群の歩行速度が遅かった(P=.007)。 調整変数に年齢、処方薬剤多数群を強制投入し、男性ではほかに、慢性疾患重複あり群と糖尿病が選択され,ロジスティック回帰分析を行った。前期高齢者において、男女ともに低筋肉量は歩行速度に影響を及ぼすことはなかった(男性:p=.4,女性:p=.7)が、高体脂肪率の低歩行速度に対するオッズ比は男性では2.4(p=.02,95%CI1.2-4.9)、女性では2.2(p=.03,95%CI1.1-4.6)と有意に影響がみられた。また、男性では糖尿病のオッズ比が3.4(p=.01,95%CI1.3-8.3)と有意性を示した。 これらのことから、前期高齢期において高体脂肪率が低歩行速度のリスクとなることが明らかとなり、前期高齢者に対する高体脂肪率を予防する取り組みの重要性が示唆された。
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