本研究は,精神科デイケアに通所する糖尿病を併せ持つ精神障がい者を参加者として,参画型糖尿病教室(以下,教室とする)の実証研究を行った。 患者参画型糖尿病教室の概要は以下の通りである。月に2回のペースで1回1時間程度の教室を開催した。KJ法を用いて参加者の糖尿病に関する知識を整理することで,自分たちで学習したいテーマ発見につなげた。教室では,心理教育の進め方を用い,学習会とディスカッションを繰り返し,糖代謝のセルフモニタリングと併せ,糖尿病コントロールに向けた目標設定・行動に取り組む運営を約2年間行った。 本教室への参加者は10名であったが,2年間継続参加した6名を分析対象とし,教室継続中に4回実施したフォーカス・グループ・インタビューの内容を逐語録にし,分析データとした。複雑な要素の意味やつながり,関係を空間的に示すことで,全体の構造的な理解を可能にする質的統合法(KJ法)で分析した。 分析統合を繰り返し,7つのシンボルマーク《 》にまとめられた。参加者が持っている潜在的な力を土台にして,本教室の学習内容に《興味・関心の高まり》が生じ,回を重ねるうちに少しずつ《帰属意識と開放性の高まり》が確認できた。そこから《他者の肯定と支え合い》ができるようになると共に《問題意識と現実に向かう意欲》が生じていた。課題解決に向かう過程で《予期性不安の表出》をしながら対処行動をとり,検査結果の改善がみられると,《満足感と自己成長の自覚》につながっていた。そして,ご飯量を測る,運動に取り組むなど《生活の質改善とコントロール感の獲得》につながっていた。 以上のことから,HbA1c値などをセルフモニタリングすることで,目標を設定して生活改善に取り組むなどの行動変容がみられただけでなく,集団での学習会とディスカッションを繰り返すことで,エンパワーのプロセスが漸進したことを確認できた。
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