研究課題
近年,高齢者の精神保健への関心が高まっている.一次予防の観点から大規模地域サンプルを対象としたスクリーニング調査が必要であり,かつ,脱落者や回答困難者を可能な限り減らすことが重要である.このためには,簡便かつ他者評価が可能な測定ツールのニーズや利用可能性は非常に高いと考えられる.以上を踏まえ,本研究では高齢者用の「他者評価による精神的健康尺度」の開発を目的として実施した.既存の精神的健康尺度から測定項目を選定し,62-89歳の健常及び認知症高齢者62名ならびに高齢者本人をよく知る家族(配偶者28名,子ども27名,この配偶者5名,その他2名)に同様の項目を聴取し,関連を検討した.その結果,項目ごとの相関係数(Pearson)はr=-0.02~0.11で相関関係は極めて低かった.項目の合計得点ではr=0.22と5%水準では有意な関連は示されたが,弱い相関関係しか示されなかった.ただし,健常高齢者と認知症高齢者に分けて比較すると,健常高齢者ではr=0.56(p<0.01)であり中程度の相関が示される一方,認知症高齢者ではr=0.15(n.s.)と有意な関連は示されず,認知機能が低下した対象者の場合,自己評価と他者評価の間に大きな乖離があり,本調査で選定された項目では妥当な測定が困難であると考えられた.認知機能が低下した高齢者においても評価可能な項目を再選択する必要がある.上記に加え,一部の検査については調査フィールドで自己評価法による精神的健康尺度(WHO-5-J)を中心とした面接調査によりデータを収集し,地域高齢者を対象とした研究成果の一部を学術誌,および学会で発表した.
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老年精神医学雑誌
巻: 26 ページ: 183-195
生存科学2014
巻: 25 ページ: 173-185
老年社会科学
巻: 36 ページ: 330-339
巻: 26 ページ: 55-66