研究課題/領域番号 |
24600008
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
松本 かおり 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20447808)
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研究分担者 |
土屋 賢治 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20362189)
成宮 牧子 浜松医科大学, 医学部附属病院, その他 (20588769)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | コホート / 疫学 / 母子保健 |
研究概要 |
目的> 母乳のアレルギ-疾患発症の抑制効果を多目的出生コホ-トの前方視的デ-タ(浜松母と子の出生コホート)を用いて解析することにある。2012年度(初年度)は対象者の情報収集と予備的な解析を行った。 方法> 浜松医科大学医学部附属病院において、2007年11月21日~2010年12月31日の間に分娩のあった1011名の妊産婦および1048名を潜在的な対象者として分娩・出産時から追跡を行い、児の24ヶ月齢まで追跡可能であった901名の児を本研究の対象者とした。対象となる妊産婦に対して、妊娠中から児の24ヶ月齢まで合計8回の面接を行い、人口統計学的情報、妊産婦と児の生活背景に加えて、出産~6ヶ月齢までの授乳状況に焦点を当て、「①全く人工乳を使わない(母乳のみ群)」「②6ヶ月齢において混合栄養(混合群)」「③6カ月齢までに断乳を完了(断乳群)」のいずれかに振り分けた。また、アレルギー疾患の有無については、14ヶ月齢および24ヶ月齢においてThe International Study of Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)3版の質問票を用いて情報を収集した。 結果> 14ヶ月齢および24ヶ月齢においてISAACの評価を終え、データ入力の完了した871名の対象児について、予備的な解析を行った。その結果、14ヶ月齢、24ヶ月齢いずれにおいても、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎の認められた児の割合について、3群間で有意な差が認められなかった。この結果は、児の性別、出生体重、同胞順位、母親のアレルギー疾患の既往の有無を統制しても変わらなかった。なお、14ヶ月齢において、食物アレルギーの認められた児の割合は、①母乳のみ群よりも③断乳群で有意に低く、24ヶ月齢においても同様の傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.対象者の募集・情報収集の状況の観点から 浜松母と子の出生コホートは1200組を上回る母子を募り運営されている。本研究はその一部をなすものであるが、24ヶ月齢までの追跡において脱落者が予想よりも少なく(5%)、またmissing dataも非常に少なかった。本研究の律速段階は情報収集の過程にある。すなわち、対象児の発達評価と母親への面接を、一例につき1時間以上かけて施行するという時間とヒューマンリソースの消費、およびデータ入力の労力が本研究の進捗を左右するものと考えてきた。これを踏まえ、我々は、3年間かけておよそ1000名の、24ヶ月齢に到達した児を対象とした解析を行うことを目指してきた。現時点では、来年度中にその目標のクリアが見込まれる。 2.アウトプットの観点から 今回の予備的な解析から、結果を見通す一定の方向性が見えつつある。少なくとも、母乳とアレルギー疾患の関係は単純ではないため、さまざまな共因子の考慮が必要になることが確実視され、来年度の研究計画に活かすことが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
1.情報収集の継続 残る100名超の対象児の発達評価と面接を継続し、目標症例数をクリアする。 2.授乳行動を決定する共因子の探索 母親の社会心理学的因子(教育歴、年収、年齢、メンタルヘルス)、産科学的因子(帝王切開、在胎週数、分娩の既往)と、授乳行動との関連を探り、関連が見出されれば予後予測モデルに投入する。 3.児の生活習慣に関する共因子の探索 乳幼児期における受動喫煙、薬剤投与(抗生物質、解熱剤)、栄養(摂食習慣、食物の選択)、生活習慣と、アレルギー諸疾患との関連を探り、関連が見出されれば予後予測疾患予測モデルに投入する。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書に示した内容での使用、すなわち以下の目標に沿った支出を予定している。 1.発達評価と面接を行う対象児への謝礼。 2.データ入力補助者への謝礼。 3.臨床心理学会(予定)への参加と発表。 4.論文執筆にともなう投稿料。
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