本研究は形成的フィールドワークを方法論として、親子の成長を支える子育て支援実践の創造的継承を可能にする実践システムを構築しつつ、その形成過程を明らかにすることを目的としている。 初年度から2年目にかけては、熟達保育士がその専門性を他の保育士に受け継ぐ営みを保育所の日常活動の中に織り込む試みを重ね、支援実践を継承する上で保育所全体の体制としてどのような工夫が必要かを明らかにした。また、親子の成長を支える支援実践を創造的に継承していくために、熟達保育士が実践を伝える上で必要となる工夫と新担当保育士が実践を身につけていくために必要な学びのプロセスを明らかにした。 最終年度である本年度は、これまでの継承実践の蓄積を活用し、支援実践をさらに次の担当保育士に受け継ぐための実践的工夫を重ね、親子の成長を支える支援実践を多世代にわたり持続的かつ創造的に継承することを可能にする実践システムを形成した。支援実践の継承を試みる過程で、多くの保育士にとって子育て支援センターを担当することは予想以上にハードルが高い任務であることがわかった。これは、保育士の養成課程が子どもの保育を中心に構成されており、子育て支援に必要な知識と体験が得られるような内容にはなっていないことを考えると無理のないことである。形成的フィールドワークを重ねる中で、子育て支援実践の継承を支えるには、担当する前の年にワーミングアップ的に支援センターでの支援体験を準備することが有効であることが明らかになった。また、保育士がかかわりを通して親子の関係性の特徴を理解し支援を工夫することを支える学びが重要であることが明らかになったことから、親子の課題の見立て方についての実践知を支援実践とその継承に活用可能な形に整理した。さらに、親子の課題の見立てに応じた支援的介入の工夫を支えるツールとしての支援事例集を作成した。
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