本研究の目的は、以下2つの乳幼児-養育者の関係性評価法の信頼性・妥当性を検討することにある。2つの評価法とは,乳幼児-養育者の相互交渉(Interaction)の評価法「Caregiver-Child Structured Interaction Procedure」と、養育者の乳幼児についての乳幼児との関係についての表象の評価法「Working Model of the Child Interview(WMCI)」の2つの評価法である。対象は、相州乳幼児家族心療センターを訪れた連続的な症例で、最新のものからさかのぼり、両親が研究に同意した乳幼児とその養育者を対象とする。 2つの評価法は,それぞれ評価に際して資格が必要であるが,本研究では有資格者に評定を依頼し,約50組の母子について評定を行った。その結果2つの関係性評価の手法は,一定の妥当性が確認された。この妥当性の確認は,質問紙との関連を検討しているため,充分な妥当性が確認されたとは言えない。そもそも乳幼児と養育者の関係性を,直接的に測る手法が未だ本邦では充分に確立されていないため収束的妥当性が充分に検討できないという課題が残っている。 またこれら2つの関係性評価の手法同士の関連からは,次のようなことが明確になった。第一に母親が子供に対して適切な表象を抱いている場合,養育行動も適切な側面が高いことが確認された。しかし,母親の子どもに対する適切な表象は,必ずしも子どもの相互交流的行動とは関連が見られなかった。このことから,母親の抱く子どもの表象と,現実の子どもが示す行動との間には,何らかの変数が存在するのではないかと推測される。今後,この変数も含め,さらなる検討が必要であると考えられる。
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