子どもの成長・発達にも父親による育児の重要性が指摘されており、少子化対策の点からも父親の育児参加が課題の一つとされている。ヒトと近縁な霊長類であるコモン・マーモセットは家族を形成し、父親が育児をする特徴を持つ。マーモセットでは父性は脳の構造変化をもたらすことが示唆されているが、この父性に関係しているオキシトシンホルモンレベルと父親の養育行動との間に関連があるのかを明らかにし、父親の養育行動の心理学的側面と生物学的基盤にせまることを目的とした。マーモセットをペアリングし、妊娠成立が確認できたペアのオスの採血を行い、出産前、出産後の検体を採取分析を行った。解析の結果、マーモセットのオスの血中オキシトシンは、出産後よりも出産前の方が高値であり、出産1ヵ月で急速に低下する。マーモセットのオスは子どもの出生に合わせて、養育のためにホルモンレベルを上昇させ、育児中はそれほど高いオキシトシンレベルを維持しなくても養育が出来ることが明らかになった。養育を積極的に行うオスでも養育を積極的に行わないオスでもこの傾向は同様であった。この結果より、オスの養育に影響を与える因子としてはオキシトシンの分泌量よりも、脳内のオキシトシン受容体に依存する可能性が考えられた。
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