研究課題/領域番号 |
24600021
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
児玉 達朗 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (70553121)
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研究分担者 |
定行 まり子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (80235308)
三輪 律江 横浜市立大学, 総合科学部, 准教授 (00397085)
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キーワード | こどもの居場所 / ファシリティマネジメント / 小学校 / 防災拠点 |
研究概要 |
少子化に伴う児童数の減少などにより廃校になる学校がある一方で,地域からは防災拠点として学校の活用は期待される。一般に小・中学校施設は緊急時の避難場所となる地域防災拠点に指定し,平時において教育場所,緊急時には市民の避難場所という役割を担う。平時における教育場所としての施設管理は体制が明確である一方,緊急時の体制整備は必ずしも明確とはいえない。平成25年度は,横浜市の事例から平時と非常時との日常的な連携についてファシリティマネジメント(以下,「FM」)の視点から考察した。 1.横浜市の防災計画策定箇所「横浜市総務局危機管理室」が認識する防災拠点および運営委員会に関する課題についてヒアリングを行った。(2013年8月6日)明らかになった課題は,① 構成員の偏りと固定化,②運営委員会の情報発信,③ 各拠点の活動意欲の差異,④学校との連携不足であった。 2.学校と運営委員会,それぞれの立場からみた防災拠点の現状や課題,両者の意識の差異を把握するために,次の2つの調査を実施した。①防災拠点小・中学校の学校長へのアンケート調査;学校側の運営員会の活動に対する姿勢や意識,地域やその他組織との連携状況を把握することを目的に,市内の地域防災拠点指定小・中学校443校を対象に郵送にて実施した(有効回収票163校/回収率36.8%)。②横浜市港北区の防災拠点へのヒアリング調査;横浜市役所担当課への事前ヒアリングから,横浜市内で先駆的に防災活動を進めている港北区を対象に,運営委員会側からみる日常的な学校との関わりや防災活動の実態を知るために,港北区地域防災拠点訓練に実際に参加し,訓練を体感するとともに,運営委員会委員長に学校・地域との連携についてヒアリング調査を実施した(4箇所)。 研究実績は2014年度日本建築学会大会(近畿)にて発表予定。(4月8日梗概投稿・受理)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来から横浜市教育委員会に対して調査実施の申し入れをして来たが必ずしも協力的では無かった。今回,小学校の使われ方を地域防災の切り口で行ったところ,防災拠点小・中学校の学校長へのアンケート調査が可能となった。地域連携の実態については,本研究では運営委員会・地域・学校の3つの組織の連携に焦点を当て考察したが,「運営委員会=地域」という現状がゆえ,両組織の連携は円滑である一方で連携先が固定化されていることも否めない。ここでは運営委員会の構成員が地域内交流に影響を及ぼすことが明らかとなったことからも,運営委員会の構成員の多様性は地域交流の輪を広げることが期待できると考える。また,運営委員会と学校の連携については,学校開放つまり運営委員会が日常的に学校に出入りし利用することが,両者の連携にプラスの影響があることが示唆される。運営委員会が日常的に学校に拠点を持ち普段から気軽に来校できる環境が,運営委員会・地域と学校の「顔のみえる関係」につながり,地域防災拠点としての機能が高まると考える。 また,今後の課題として,①一般市民の防災活動への巻き込み:運営委員会の活動内容を一般市民が把握できるよう活動内容の情報発信を強化し,広く一般市民の防災活動の参加を促す,②地域防災拠点同士のネットワークの強化:拠点同士の情報交換,ノウハウの共有によって,生じてしまっている各拠点の活動内容や意欲の差異を埋めることが可能ではないか,と指摘できる。これら一連の「学校運営側」の実態が明らかになったことは本研究で最終的に目指すあるべき公立小学校の使われ方の提案に向けて大きな成果を得られたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の調査では,運営委員会が学校施設以外の地域施設の利用実態としては自治会館・町内会館の利用が最も多かったことが明らかになった。運営委員会の主要メンバーが自治会・町内会役員であることが原因の1つであると考えられる。コミュニティハウスや地域ケアプラザを利用している拠点には,それぞれの職員が運営委員会に在籍しているケースが多くみられた。日常的に交流のある組織は,自治会・町内会が最多であり,続いて区の防災担当,地域消防団,消防署と防災関係の組織があがった。防災関係の組織とは防災活動のみの関係,防災組織以外の組織とは防災活動以外の関係と,明確に交流の目的が分かれていることが示された。 平成26年度ではこの調査結果を受けて自治会と小学校の関係について調査を深掘りする。 具体的には横浜市戸塚区前田町での調査を予定している。また調査・研究体制を強化するため,同地での調査実績を有する目白大学短期大学部教授浅見美穂を分担研究者として新たに追加する。連携研究者から研究分担者にすることにより、研究費の管理を目白短期大学において行うことができるようになり、現在より一層効率的な研究費の執行が見込める。浅見教授は横浜市におけるこれまでの研究実績から,基礎調査で得られる知見の分析には単に調査の協力のみならず分担研究者として主体的に研究に取り組んで頂くことが効果的である。併せて,横浜市内の防災拠点小・中学校の運営員会の活動に関する調査も継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査に際しての機材,謝礼等が当初計画に比較して軽微であったことによる。 調査用機材を年度当初に購入予定。
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