研究課題/領域番号 |
24600025
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研究機関 | 青山学院女子短期大学 |
研究代表者 |
渡部 かなえ 青山学院女子短期大学, 子ども学科, 教授 (50262358)
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キーワード | 健康格差 / 子ども / 健康教育 / 国際研究者交流スウェーデン / 国際研究者交流ニュージーランド / 国際研究者協力アメリカ合衆国 |
研究概要 |
日本の子どもの健康と健康に影響を及ぼす要件の調査を行い、諸外国と比較した。 調査の結果、日本の子ども達の体力・運動能力の全国平均値は向上しているが不健康児が増えているという、一見矛盾する状況にあることが分かった。また肥満児が増加していると言われているが、実際には増えてはおらず、逆にやせ気味で低体力の子どもが増えていた。これらの背景には、子ども達の健康と体力の二極化傾向がある。健康的な生活をしている子どもも少なくない一方、不健康な生活をしている子どもも増えており、子ども達の間の生活環境の格差が健康格差を生み出していると推察された。差異・格差があるなら、個別の教育支援・対応が必要である。学校は子ども達の健康状態とその環境要因をどのように把握しているのか、実際にどのような健康教育を行っているのかの調査の必要性が明らかになった。 スウェーデンでは、子ども達は年間を通して外で元気に十分な時間を遊びに費やしていた。子どもや家庭の状況に応じた行政からの支援が、生活の格差や健康格差の発生の抑制に貢献していると考えられる。その一方で近年、子どもの肥満や多動の問題が大きくなりつつある。恵まれた生育・教育環境・福祉システムの中にありながら、なぜそのような問題が大きくなってきたのかの調査が必要である。 さらに、格差が大きな社会問題になっているニュージーランドでの調査で、経済格差が子どもの健康状態に深刻な影響を及ぼしており、経済格差が家庭生活だけでなく学校での健康教育の格差にも甚大な影響を及ぼしており、また子ども時代の健康格差が大人になるとさらに拡大し、生涯に渡って深刻で決定的な健康問題を抱えることになることが明らかになった。そして健康格差は一般的に考えられているよりずっと幼い時にすでに発生している可能性が示唆され、小学校や就学前施設での健康教育の充実の重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の子ども達の体力や健康的な生活習慣の二極化傾向が顕著になってきており、子ども間で健康格差が発生していることを調査研究によって把握した。また肥満児が増えていると言われているが、実際には増えてはおらず、やせ気味で低体力の子どもが増えているという現状を把握することができた。そして、その背景には、幼い頃からの運動不足だけでなく不適切な食習慣や睡眠(夜更かし朝寝坊や睡眠不足)があり、初等教育期の健康教育を実施することの重要性と、その指導の一層の充実の必要性が示唆された。 また、子ども達が平等にそして必要な健康と福祉に関する支援を行政から受けることができるスウェーデンで、子どもの健康と安全に関する視察調査を行うことができた。そしてスウェーデンでの調査研究の成果の一部を、「スウェーデンの健康教育」として、保育内容「健康」の教科書である「子どもの育ちを支える 子どもと健康」に執筆した。発行は、2014年4月1日。 さらに、日本と同じ島国で国土の大きさも同じ位のニュージーランドで、経済格差が子どもの健康格差にも影響を及ぼし、学校(義務教育校)での健康に関する教育の格差をももたらしていることを、学校および学校教員を対象としたインタビュー調査研究によって明らかにすることができた。経済格差・社会格差が発生し拡大しつつある日本で、子ども達の健康格差の拡大を防ぐための研究に必要な基礎的データを、ニュージーランドの子どもの健康と義務教育校での健康教育の調査で得ることができた。また、ニュージーランドでの調査結果の成果の一部を、「ニュージーランドの健康教育」として、保育内容「健康」の教科書である「子どもの育ちを支える 子どもと健康」に執筆した。発行は、2014年4月1日。
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今後の研究の推進方策 |
日本の小学校の子ども達の個別の健康状態を、学校教員はどのように認識し把握しているのか、その子ども達に教員はどのような健康教育(保健の授業)を行っているのか、健康教育(保健の授業)の具体的な成果を授業者である教員はどのように認識し自己評価しているのかを、学校教員を対象とした半構造化されたインタビュー調査を実施して検証する。格差が非常に小さいスウェーデン、既に経済格差・健康格差があり、さらなる格差拡大を抑止しようとしているニュージーランド、非常に大きな社会格差があり、健康格差も大きな社会問題になっているアメリカ合衆国での調査の実施と、得られた成果を日本での調査結果と比較検討し、格差社会が子どもの健康と命に及ぼす影響の早期発見と自分で自分を守る力を育む教育についての提言を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時には日本語の文献(書籍・専門雑誌)を購入する予定であったが、当該年度は1年間ニュージーランドで研究をしていたので、ニュージーランドでの日本語の書籍の購入は困難あるいは送料が非常に高くつくので、帰国後の次年度に購入することとした。 日本語の文献(書籍・専門雑誌)を日本国内で購入する。
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