研究課題/領域番号 |
24600025
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研究機関 | 青山学院女子短期大学 |
研究代表者 |
渡部 かなえ 青山学院女子短期大学, 子ども学科, 教授 (50262358)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 子ども / 健康教育 / カリキュラム / 格差 |
研究実績の概要 |
日本の子どもの健康状態と健康教育について、小学校教員のナラティブ・データを質的研究手法で分析し、平成25年度にニュージーランド(NZ)で行った同調査研究の結果と比較検証した。NZでは、経済格差が子どもの健康格差・教育格差に及んでいた。公立校でも保護者からの寄付が多い学校とそうでない学校では、健康教育の内容や指導法に格差があり、学習したことの実践の機会にも差があって、それが子どもの健康状態の違いにもつながっていた。日本では学校間の格差がなくどこの学校でも一定レベルの授業が保障されている一方、学習指導要領に準拠した授業をせねばならないので、そこに記載されていない、今、子どもが直面している健康問題は授業で扱えないという問題があった。この研究成果は、Comparative Study Of Children’s Current Health Conditions And Health Education In New Zealand And Japan、Contemporary Issues in education research, Vol.8, No.2. pp 117-122(査読付き原著論文 2015年4月)として発表した。 またNZでは小児肥満が小児保健と子どもの健康格差の深刻な問題である。複数のプロジェクトの中で、専門家を学校に派遣し、保健体育の授業で子ども達に直接指導するProject Energizeが、小児肥満の解消と体力向上に効果があった。しかし学校教員自身の保健体育の授業スキルは改善されず、専門家の派遣期間終了後を見据えた教員の再教育の必要性が明らかになった。この研究成果は、「ニュージーランドの子どもの健康とProject Energizeによる保健体育の授業への介入」、青山学院女子短期大学紀要、第68輯、pp.141-149, 2014 で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本と国土の広さや島国であるという共通点がある一方で、実は格差が大きな社会であるニュージーランドは、米国以上に比較対象として適切であることが分かったので、ニュージーランドを調査研究の対象に加えた。格差社会が子どもの健康と健康教育に及ぼす影響について、ニュージーランドと日本との比較研究から考察することができ、成果を査読付き論文として国際学術雑誌に発表することができた。また、調査対象の1つであるスウェーデンの、子どもを対象とした健康教育の概要を、幼稚園教諭免許・保育士資格取得の必修科目、保育内容「健康」の教科書『子どもの育ちを支える子どもと健康』(共編著)に記載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、日本では授業は学習指導要領に準拠するという制限があるので、子どもが今直面している子どもを取り巻く健康問題に学校教育が取り組むことが困難であるという問題点と、その一方で学習指導要領が学校間格差のない保健教育(健康教育)の質の保証を担保していることが明らかになった。よって今後は、子ども達が今直面している健康問題、子ども達一人ひとりの健康問題への個別対応を可能にするフレキシビリティと質の保証の両立を実現するにはどうしたらいいかを検証していく。 また、格差社会の子どもの健康に及ぼす影響と、それに対応できる教育について、学童よりももっと周囲の環境の影響を受けやすい幼児についての、日本と諸外国の調査研究も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表のために国際学会(米国で開催)に参加したが、その際の旅費の一部が米ドル立てだったので、為替相場の変動の影響を受け、当初の予算との差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の発表のための費用(学会参加費)の一部とする。
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