研究実績の概要 |
子どもの生きる力を支える行動学習について、ピンセットで対象物をつまみゴールに運ぶという運動課題の習得過程と、同じ課題のサルの結果の比較から検討した。実験の結果、ヒトの子どもは、当初は各動作を一つ一つ順番に行っていたが、すぐに一つの動作が完了する前に次の動作を開始するようになり、複数の動作を並行して、あるいはオーバーラップさせて行えるようになることが分かった。また、教える-学ぶという生育環境を持たないサルの結果との比較で、ヒトの子どもの行動学習は、教える-学ぶという学習環境があるか否かに依存すること、教える-学ぶ環境に恵まれない子どもは、探究動作、対象物との間のアフォーダンスの獲得、動作の統合・協調などの発達が遅れることが推察された。(渡部かなえ、小児の道具操作の適応と学習プロセスの事例研究、青山学院女子短期大学紀要, 第69輯, pp.141-149, 2015.) また、子どもの健康と健康教育の国際比較から、経済格差が大きいニュージーランドでは、公立学校間の教育格差、子ども達の学習格差や健康格差にも及んでいるという問題点が明らかになった。日本では、公立学校間の格差はほとんどなく、一定レベルの授業内容が保証されていたが、一方、10年に1度しか改訂されない学習指導要領に記載されていない、子どもが今、直面している健康問題を授業で扱えないという問題点が明らかになった。(Watanabe K., Dickinson A., Comparative study of children's current health conditions and health education in New Zealand and Japan. Contemporaly Issues in education research, Vol.8, No.2, pp117-122, 2015)
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