研究課題
本研究の目的は、社会的関心が高くなっている「こどもの放射線影響」に対し、動物を使って放射線の反復被ばくの影響を明らかにするとともに、病院における放射線診療の実態、並びに、コミュニケーションに必要なパンフレットを作成するとこである。①反復被ばく実験: B6C3F1マウス、生後1週ならびに7週齢時から、0.125Gy、0.25Gy、0.5Gy、1Gyを毎日4日間連続(反復)で照射した群(各群50匹)と非照射群(100匹)を設定した。中間段階(3月末)で、Tリンパ腫の発生率が、1週齢群で24%、7週齢群で6%であった。発生したリンパ腫は、病理標本を作製し、また、分子解析用に凍結保存した。1回0.5Gy以下の反復照射群にはTリンパ腫の発生は観察されていない。さらに、飼育観察中である。②病院での医療被ばくの実態調査: こども(小児)病院での放射線検査は、年齢が若いほど多い。病気の種類によっては反復検査を受けている患者もいる。小児ファントムを用いてガラス線量計で実際に臓器吸収線量を測定し、実効線量を計算したところ、国際的に報告されている値に比べ同じか低い程度であった。また、測定値は、モンテカルロシミュレーションの用いたImpactやCT-Expoのツールを用いて計算した値とくらべ、最大2割程度の違いがあった。③パンフレットの作成: こども病院の医療スタッフと意見交換し、保護者のよくある質問に答えるためのパンフレットを作成した。今後改訂版を作成するために、配布したパンフレットに対する意見を募集中である。
2: おおむね順調に進展している
マウスの実験群を設定し、順調に観察が進んでいる。病院での調査結果は、現在、論文をまとめているところである。パンフレットについて、脳外科(外傷で運ばれた患者のCT撮影の正当化の基準)や循環器科(心臓カテーテルの最適化)について質問を受け、CT検査の実態調査以外の、今後の課題もでてきた。
①反復被ばく実験(マウス実験): 設定した照射群の飼育観察を引き続き行う。解剖したマウスは全ての臓器について病理標本作製を行う。また、1週齢ならびに7週齢のマウスに反復被ばく(1Gy x 4回)した後の胸腺、小腸、肝臓、肺を固定し、γH2AXやPCNA、カスパーゼ3などの発現を、1Gyならびに4Gy1回被ばくの臓器と比較する。②病院での医療被ばくの実態調査: 現在、CT検査の実態調査(患者の年齢や診療科、撮影部位、回数)を論文として投稿準備中である。また、患者の被ばく線量ならびに実効線量についても、各国間比較を終え、論文を執筆中である。病院と相談して、CT検査以外の、IVRの調査や線量評価を行ないたいと考えている。③パンフレットの作成: 配布後、医療スタッフや保護者の意見を取り入れ、改訂版を作る。また、患者が必要としている情報の発掘を行う。
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Radiation Research
巻: 181 ページ: 172-176
doi: 10.1667/RR13446.1.
巻: 181 ページ: 302-313
doi: 10.1667/RR13466