カロリー制限は、がんの発生を予防する方策として注目されている。しかし、成長期であるこどもの場合、カロリー制限をすることはできない。我々は、こども期に被ばくしても、成体期からカロリー制限を行うことによって、肝がん発生が有意に低減することをマウスを用いて実験的に証明した。 本研究では、カロリー制限による放射線発がんの抑制メカニズムを解明することを目的とし、発生した肝がんにおけるゲノムや遺伝子発現解析により、カロリー制限で抑制される発がん経路の同定を行った。 前年度までにB6C3F1マウスを用いた発がん実験では、肝がんサンプルのアレイCGH解析と遺伝子発現マイクロアレイ解析を行った。しかし、サンプル数が少なく、個体差が大きいため、ゲノムコピー数の変化パターンと遺伝子発現パターンの違いを見つけたが、カロリー制限のターゲットになるがん関連遺伝子の抽出までには至らなかった。そこで今年度は、解析する肝がんサンプル数を追加して、全染色体のLOH解析、アレイCGH解析、遺伝子発現マイクロアレイ解析を行った。LOHとアレイCGH解析の結果から、非照射群に比べて、照射群のゲノム欠失や増幅の頻度が高く、ゲノムコピー数が変化しないサンプルの一部には、mitotic recombinationを介したLOHを示すサンプルが確認された。これらの現象は、照射群の中では、カロリー制限群に比べて非制限群で頻繁に観察された。遺伝子発現マイクロアレイ解析の結果からも、カロリー制限によって遺伝子発現パターンの違いが確認され、パスウェー解析から、カロリー制限による細胞増殖の抑制、細胞周期の停止、炎症反応の低減が示唆された。 これらの結果を論文に纏めて、投稿準備中である。
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