研究課題/領域番号 |
24600033
|
研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所) |
研究代表者 |
植田 紀美子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, 臨床研究支援室長 (60538081)
|
研究分担者 |
米本 直裕 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, その他部局等, その他 (90435727)
|
キーワード | 障害児 / 家族支援 / 療育 / 評価指標 / アウトカム評価 |
研究概要 |
障害児及びその家族にとって、居住する場所や利用する療育施設に関わらず、どこでも適切な療育を受けられることが望まれている。そのため、療育評価指標が必要である。本研究の目的は、療育による障害児家族の変化(アウトカム)を尋ねる質問票(日本版家族アウトカム質問票(Family Outcome Survey Japan version: FOS-J))を用いた療育効果の評価方法の有用性を検証することである。 平成24年度に予定どおりに信頼性・妥当性を確認したFOS-Jについて、平成25年度には国際学会(IASSID 3rd Asia-Pacific Regional Conferenc)で紹介し、当該分野専門家との討論を行った。FOS-Jを我が国の療育現場に即した指標にさらに発展していくためには、療育現場での試行の必要性、療育実践者らの意見集約の必要性を指摘された。 それらを踏まえ、「療育効果測定のための家族アウトカム指標に関する全国調査」を実施した。調査対象施設は医療型及び福祉型児童発達支援センター444箇所で、回答者はセンター長など全貌を把握している者とした。障害児通所支援の規模、家族支援内容、支援サービスの評価(子どもと家族)方策、FOS-Jの関心度に関して、記名式自記式質問票を使用して調査を実施した。444か所のうち230か所(51%)の児童発達支援センターが全国児童発達支援協議会の会員であることから協議会会長の協力のもと調査を実施した。197箇所から回答をえた(回答率44.3%)。有効回答183箇所について解析した。結果を調査対象者に周知するため結果をとりまとめている。7月には、多くの療育施設が会員である全国児童発達支援協議会の研修会において結果報告を行う。また、FOS-Jから発展させ日本の療育現場にみあう療育指標の開発に積極的に協力できると表明した児童発達支援センター14箇所に対して、今後の研究計画を提示したところである。児童発達支援センターの利用者にも協力を得たうえで、指標の開発を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究結果を普及していくことを念頭に、関係機関との連携を重視して研究を進めている。以下のように平成25年度は進めていき、順調に研究が進展していると考える。 「療育効果測定のための家族アウトカム指標に関する全国調査」を実施した。全国のすべての児童発達支援センターに対して実施し、比較的高い回収率で約半数の回答を得ることができたことで、我が国の療育施設における療育効果測定に関する実態や考え方を把握することができた。また、全国児童発達支援協議会の協力のもと実施できたのは、結果を普及し、療育効果指標を提案していく上で有効であったと考える。調査を通じて、療育指標の開発に積極的に協力できる児童発達支援センターを14箇所も得ることができたことで、より我が国の療育現場の実情に応じた指標開発に向けて準備が整ったと考える。初年度から延期になった海外視察については、平成25年度は海外共同研究者(Dr. Bailey)の来日により、海外視察内容についても直接話し合いを重ねることができた。受け入れ側の適切な時期を考慮し、平成26年度に実施することとした。海外共同研究者との意見交換では、療育現場でFOS-Jを使用した際、社会文化的背景が異なる場合で得点に差があることから、得点差に影響を与える背景因子を考えることで、各国の実情に即した指標に発展できることを確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の調査結果のとりまとめを調査対象の全国の児童発達支援センターに報告し、全国児童発達支援協議会研修会において、解説を行う。その際、寄せられる意見についても今年度の指標開発に加味する。調査で療育指標の開発に積極的に協力できる児童発達支援センターを14箇所を中心とした児童発達支援センターの協力を得て、専門家レビューにより、FOS-Jに微修正を加え、日本の療育現場にみあう療育指標FOS-JRを提案する。その後、療育を提供する介入施設群と通常療育を行う対照施設群にクラスターランダム化する。介入施設群では、最初に障害児家族へのFOS-JRの実施してもらい、その回答に応じた後、約半年の療育期間を経て、平成26年度に再度、FOS-JRを障害児家族に実施する。同時期に対照施設群の障害児家族へもFOS-JRを実施する。この時点で調査終了とし2群間の比較を行い、FOS-JRを用いた療育効果の評価方法の有用性を分析する。 研究分担者の米国視察調査は、FOSを用いて、療育の質の向上、均てん化を進めている米国の状況を視察する。FOSを開発・普及し、各州療育施設での結果の集計と分析も行っているEarly Childhood Outcomes Center、また、FOSを取り入れている療育現場や州政府を視察し、Bailey海外共同研究者と視察内容をまとめるとともに、FOS-JRの普及方策についての提案を行う。前述の療育現場での研究結果と合わせて、日米での社会文化的背景の差がFOSの活用や普及にどのように影響しているかについても考察する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度後半に予定していた療育施設をクラスターランダム化するための調整が、次年度になったため。それに要する費用も次年度に持ち越すことになった。 FOS-JRを用いた療育効果の評価方法を検討するための比較研究を実施するにあたって、療育施設をクラスターランダム化する際、療育施設と調整するための旅費や療育施設への参考購入費用などが生ずる。
|