研究課題/領域番号 |
24601002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 守 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (10595573)
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研究分担者 |
千田 浩一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (20323123)
盛武 敬 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 准教授 (50450432)
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キーワード | 患者被曝線量 / ガラス線量計 / 心臓CTの被曝線量 / 血管撮影時の被曝線量 / 透視時間 / DAP / AK / CTDI |
研究概要 |
心臓領域におけるInterventional Radiology (IVR) では、X線が入射する患者背部皮膚面が最大吸収線量となるため、背部の皮膚障害が報告されている。この背部の放射線皮膚障害を防ぐには、IVR時の正確な線量測定が必要である。しかし、現在、線量実測法は確立されておらず、今研究で、錫フィルタ無しの蛍光ガラス線量計(RPLD)と患者装具を用いた新たな線量実測法を開発した。 これまでにRPLDの諸特性を検討し、心臓IVR領域の線量測定に有用であることを検証した。また、RPLDを一定間隔で配置した患者装具をデザインし、製作した装具とRPLDを用い、胸部人体ファントムを用いて線量測定法を検証し、臨床時の心臓IVRにて、患者被曝線量データを70症例収集した。 一方、心臓CTは他部位のCT検査に比べ患者被曝線量が多く、心臓IVRに関連する多くの症例は心臓CTが行われるため、心臓IVRと同様な線量管理が必要である。しかし、現在のCT装置には患者皮膚線量を測定する機能は装備されていない。そこで、IVRと同様に患者背部の線量を実測するCT用の装具を開発した。心臓CTの場合、X線ビーム幅が細く、上記のIVR用の装具では最大線量を正確に測定することが出来ず、心臓CT用の装具を新たにデザインし、製作したCT用装具とRPLDを用い、胸部人体ファントムを用いて線量測定法を検証した。測定にあたって、RPLDとCT用装具で最大線量部位を正確に把握できているか確認するために、胸部人体ファントムにRPLD装具を装着した上から、線量測定フィルムで覆い、心臓CT検査を臨床時と同様に行った。結果、RPLDとCT用装具で最大線量とその部位を把握することが可能で、心臓CT検査時に患者が装具を装着して検査をするだけで、背部の線量及び線量分布が把握可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者被曝線量測定用小型素子である錫フィルタ無しの蛍光ガラス線量計(RPLD)のIVR領域での諸特性を把握した。RPLDは熱ルミネッセンス線量計(TLD)のように蓄積した線量情報(エネルギー)が時間と共に退化するフェーデイングが無く、素子の安定性も良く、診療領域の比較的低いエネルギー領域(30-50 keV)で高い応答性を示す事が知られている。これに加えエネルギー依存性、線量及び線量率依存性、方向依存性を測定し、IVRやCTの線量測定に適していることを確認した。 患者被曝線量測定用装具に関し、IVR用は既に完成し、臨床時の患者被曝線量測定を行っている。臨床時に問題となったRPLDの脱落に関しては、装具ポケットに折返しを付ける工夫を施し、良好な結果を得た。 CT用に関しては、胸部人体ファントム実験で良好な結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
RPLDと胸部装具を用いて血管撮影時の患者被曝線量データを収集した。この測定システムで得た患者の最大皮膚線量と血管撮影装置の表示管理値(透視時間・面積線量積・累積線量)との相関を検討し、血管撮影装置の表示管理値からリアルタイムに患者の最大皮膚線量線量を推測する方法を検討する。 現在までに収集したデータには、造影検査にて冠動脈の狭窄の有無を調べた冠動脈造影検査や冠動脈狭窄を治療した経皮的冠動脈インターベンション(PCI;Percutaneous Coronary Intervention)の両方が含まれている。更にPCIの治療病変部は、冠動脈主要3枝が混在し、多枝病変症例や慢性完全閉塞症例も含まれている。これらの最大皮膚線量と血管撮影装置の表示管理値との相関を調べるには、臨床症例数を増やす必要がある。 心臓CTの被曝線量測定は、今後臨床測定を行っていく予定であるが、臨床に用いた場合、装具のRPLD位置の変更など装具の更なる工夫が必要となることが考えられる。ファントム実験を繰り返し、最適な装具の開発を行うとともに、CTにおいても、装置表示の管理値(CTDI)と臨床のRPLD値の関連性を導き、装置表示値から患者背部の最大線量を推測する方法を検討する。 収集・解析データを関連学会にて成果の発表を行い、意見交換するとともに論文化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
RPLDを購入予定であったが、メーカの都合で年度内の納品が出来ないことから、購入計画を来年度に移行した。 未使用金は平成26年度と合わせて、RPLDの購入費用にあてる。
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