研究課題/領域番号 |
24601003
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森 一生 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (90375171)
|
研究分担者 |
町田 好男 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30507083)
|
キーワード | エックス線・CT |
研究概要 |
本研究の目的は次の通りである:近年のCTの逐次近似的画像再構成法の画質は非線形挙動をする。非線形的挙動の画質評価の方法は未確立であり、従来の画像評価法を用いることで全くの過大評価となっている。それらの報告の通りに被曝を減らせるのかも信じること はできない状況である。このような問題の解決が目的である。 初年度および第二年度は、逐次近似的再構成のうち最も普及しているものについて、低CNR では雑音低減と倶に解像力低下し、実質的に画質の向上は無いかもしれない兆候を確認した。また、超低CNR 非拡大再構成の画像から正確にMTFを求めるために、PSF法、ESF法、LSF法の全てについて雑音耐性を向上させた手法を開発した。さらに、逐次近似的再構成のNPS を正確に把握するために、特に重要な低周波域のNPS計測精度を確保する方法を得た。ここまでにおいてMTF解析とNPS解析の方法論は確立できた。そして、逐次近似的画像再構成法の画質の誤評価問題について、講演と論文による解説で全国の関係者に注意を促した。 今年度は、残る物理指標としてSlice Sensitivity Profile (SSP)について初期的試みを行った。予想通りある種の逐次近似的再構成法においては、雑音低減はSSP劣化の代償を伴っていた。従ってMTF,NPSとともにSSPをも低CNRで精確に測定する必要があることが明らかとなった。また、コーン角を持つCTにおいて低CNRでSSPを測定するには特有の困難があることも明らかになった。このSSP測定法を確立する途上である。 この後、各種の臨床機の逐次近似的再構成法について、線形動作が期待される低CNR条件においてMTF,SSP,NPSを総合した画質指標を定め、それが従来の解析的再構成(FBP法)と比べて優れているのか同等であるのかを定量的に明らかにする予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はやや予定よりも遅滞している。開発したMTF解析の諸方法とそれらの計測限界についての研究は、内容的には完成しており当初予定では本年度中に論文化完の予定であったが、まだ草稿ができた段階であり近日中に論文投稿する。NPSについては特に重要な低周波域の計測誤差の由来を明らかにし、高精度計測法も開発し、従って研究としてはほぼ完了しているが、まだ草稿作成中に過ぎない。年内に論文投稿する。残件としては3次元的NPSの解析まで行う必要があるかも知れないが、これは第二年度では無く必要に応じて第三年度と考えていたので、特に遅れてはいない。 逐次近似的画像再構成においてSSP劣化の代償を伴う場合があることが明らかとなり、従ってSSP計測も低CNRで行う必要があることも明らかになった。コーン角を持つCTにおいて低CNRでSSPを測定するには特有の困難があることも明らかになった。この問題を解決するSSP計測法を開発している途上であり、シミュレーション画像においては十分な結果を得ているが、CT実機での測定においては新たな困難も見つかり、未だ確立途上である。SSP計測について得た知見は大きな研究成果であるが、予定よりも時間を要してしまっている。 今年度は最新の実機の逐次近似(的)再構成の真正な画質改善程度の算出まで行いたいと考えており、真正な画質指標として解像力及び雑音を総合した画質指標であるmatched filter SNR(MFSNR)を用いて算出するつもりであった。しかし、体軸方向解像力(すなわちSSP)も逐次近似的画像の画質に深く関わることを明らかにしたので、MFSNRには体軸方向の解像力(SSP)および体軸方向のNPSを組み入れたものを開発する必要があるかも知れない状況となり、見合わせている。この点でも若干遅れていると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの成果のまとめとしてMTFの各種測定法の雑音限界についての論文化、NPSの低周波域の測定精度限界、その由来、および改善手法について確実に論文化する。 超CNR条件で極めて高精度の類を見ないSSP測定手法を確立する。これによりそれぞれ高精度かつ低CNRでのMTF,NPS,SSPを得る事が出来、これらを総合した三次元的画質指標を算出することで逐次近似的再構成法の画質を解析的再構成法の画質と正確かつ精確に定量比較できるようにする。 前記比較を主要な複数の逐次近似的再構成法に対して適用し、真正の画質改善があるのか、いかほどの被曝線量低減があるのか(あるいは無いのか)を定量的に求め、実態を明らかにする。これで事態の本質を捉えたと言うことができ、これをもって本研究の集大成とする。 無論、これらの成果は論文化し、関係者の多くに従来の測定の問題を明らかにし、適確な評価はどのようにあるべきかを明らかにする。最後の「主要な複数の逐次近似的再構成法に対して適用し、真正の画質改善があるのか」については論文化は少し遅れる可能性もあるが、データは本助成金の最終(第三)年度で完了させるつもりである。 なお、多くの逐次近似的再構成法では本質的雑音低減(被曝低減)は得られないという結論を予期している。しかし、実は逐次近似的再構成法も多様であり、そのあるものはある種の条件で確実に本質的雑音低減を果たせることも予期している。まずは基本的な条件での特性を明らかにすることを優先とするが、出来得ればいかなる逐次近似的再構成法がいかなる局面で本質的な画質改善を果たすことになるのかも明らかにしたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
SSP測定に関し原理的な基礎を再検討する必要が生じ、その基礎が固まるまで測定ツールとしてのファントム改良制作費が発生しなかった。すなわち基礎固めを優先することで、試行錯誤的にファントムを作る無駄な費用発生を回避した。これにより30万円ほど物品費が抑制された。海外学会でこれまでの研究を発表する考えであったが、進捗が若干遅れており、海外発表は見合わせて、国内学会での小規模の発表にとどめたので、旅費が30万円ほど抑制された。さらに、英文論文の校正費用も発生する予定であったが、現在和文原稿の段階であり、発生が遅れている。すなわち、無駄な費用抑制および計画が少し遅れている事による発生の遅延が主たる理由である。計画遅れは次年度に挽回できる予定である。 今年度は計画の若干の遅れと、研究を効率的に推進したことと、両面から未使用額が発生したが、これは平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
|