研究課題/領域番号 |
24601004
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
工藤 博幸 筑波大学, システム情報系, 教授 (60221933)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 医用画像 / PET / マルチモダリティ / イメージング / 画像処理 / 画像再構成 / 画質改善 / MAP推定 |
研究概要 |
本研究では、将来のPET装置がMRI/CT形態画像を同時に撮影するマルチモダリティ化の方向に進むことを想定して、新しいコンセプトの画像再構成法や画像処理手法を開発することを目的とする。平成24年度は、以下の3つの小テーマについて研究を実施した。 (1) フュージョン再構成法: MRI/CT形態画像を事前情報に利用してPET画像の画質を改善するフュージョン画像再構成法を開発した。認知症やてんかん等の脳疾患を対象として、将来撮影済マルチモダリティ画像のデータベース化が進むことを想定して、事前に撮影された複数健常者のPET-MRI画像から正常構造を表現したマルチモダリティ標準アトラスを構築しておき、これを画像再構成に利用して画質を改善する新手法を開発した。 (2) 部分容積効果補正: 脳PETイメージングにおける画質劣化の中で影響が大きい部分容積効果を補正する手法について研究を行い、同一患者のMRI画像を利用して補正を行うMRIベース補正法の改良を行った。まず、MRI画像を領域分割しておき、各領域は一定の濃度値を持つと仮定して他領域からの回り込みを推定して劣化画像の補正を行う。従来手法では、この際に各領域のPET画像の濃度値をユーザが経験的に与える必要があるのに対して、症例毎にPET画像とMRI画像から自動推定を行うデータ駆動型の新手法を開発した。 (3) マルチモダリティ画像位置合わせ: マルチモダリティ画像の位置合わせには、相互情報量と呼ばれるPET画像とMRI/CT画像の濃度結合ヒストグラムの疎な性質を評価する指標を最大化する手法が用いられる。しかし、血流欠損等によりPET画像とMRI/CT画像の領域構造が対応しないと誤差が増大したり失敗が発生する。この問題点を解決するため、相互情報量を濃度情報のみでなく座標情報と濃度情報の両者を用いて構成する着想に基づく新手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究計画では、平成24年度は上記研究実績の中で(1)のフュージョン再構成法の研究のみを実施する予定であった。しかし、研究を進めて行く上で、フュージョン再構成法の研究を上手く実用に結びつけるには、内部で使用する画像処理手法である(2)の部分容積効果補正と(3)のマルチモダリティ位置合わせの手法の研究を同時に行う必要があることが判明した。そこで、これらについても研究を実施して国内学会の研究会で発表する程度の実績が得られた。この点については当初の計画以上の進展があった部分と考えている。一方で、(2)と(3)の研究に時間と労力を使ってしまったためフュージョン再構成法の研究成果を論文化する時間が十分取れなくなってしまった。この点についてはやや遅れている部分と考えている。総合的には、当初の計画以上の進展があった部分とやや遅れている部分があったため、おおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、ほぼ申請書に記載した通りに以下のように推進する予定である。平成25年度は、先行研究(小林,工藤: Med.Imag.Tech., 2008)を出発点として、病変自動検出機能を持つ計算機支援診断(CAD)統合型再構成法の研究を実施する。平成26年度は、先行研究(Nakayama, Kudo: 2005 IEEE Medical Imaging Conference, 2005)を出発点として、リストモードデータを用いたワンパスリアルタイム再構成法の研究を実施する。いずれのテーマも手法構築の予備的な検討は既に少しづつ進めており、学術研究としての新規性を出す着想を考案済である。実験を行うために必要なPET装置の実データ取得についても企業から提供してもらう交渉を進めており、現在島津製作所と共同でNEDOの助成を受けて実施している「マルチモダリティ対応フレキシブルPETの研究開発」で開発中の装置の実データを入手できる見通しを得ている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費に294,711円の未使用額が発生した。これは、フュージョン再構成法の研究成果を国際学会において発表することを予定していたが、現在まで達成度の欄に記載したように論文化が遅れて間に合わなかったためである。そこで、未使用額については平成25年度に旅費として使用する予定である。上記の未使用額を除いた平成25年度の研究費は1,600,000円であるが、ほぼ申請書に記載した予定通りに、ソフトウェア・ノートPC・コンピュータ用品・旅費等の用途に使用する計画である。
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