研究課題/領域番号 |
24601005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今江 禄一 東京大学, 医学部附属病院, 診療放射線技師 (80420222)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 回転型強度変調法 / 体幹部定位放射線治療 / 治療中 / 対象内構造 / 実線量分布 |
研究概要 |
回転型強度変調放射線治療(volumetric modulated arc therapy:VMAT)は,治療中に診断用kV-X線および治療用MV-X線の投影画像からコーンビームCT(cone beam CT:CBCT)画像を再構成することが可能であり,治療中の臓器の位置を同定することが期待されている.本研究では,VMATを用いて体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiotherapy : SBRT)を実施し,治療中における対象内の構造を同定した上で,実際に標的に与えられた吸収線量および対象内の線量分布を評価することを最終的な目的とした.本年度は以下のことを実施した. (1)投影画像を収集するポータルイメージングシステム(electronic portal imaging device : EPID)の品質保証や品質管理(quality assurance and quality control : QAQC)は重要であり,新しい方法を構築して,QAQCを実施した. (2)診断用kV-X線および治療用MV-X線を用いて治療中におけるの画像再構成法を構築した.プログラムには広く用いられているFeldkamp法を用いた. (3)標的の位置検出行うためには呼吸信号を検出・分割する必要があり,本研究では正規化相互相関法を用いて治療中の投影画像から呼吸信号の検出を行った.また,臨床例を対象として,取得した呼吸信号から4次元のCBCT画像の再構成方法を構築した.再構成画像から標的の位置検出および移動量を評価した. (4)臨床例を対象として,4日間の投影画像の収集を行いそれぞれにおいて4次元のCBCT画像を構築し,再構成画像から標的の移動量の日々の変化を評価した.治療中のCBCT画像を用いることによって,同一患者でも標的の移動量の日々の変化があることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,治療中の対象内のCBCT画像を得ることが可能であるVMATを用いて,SBRT中の標的の位置検出と移動量の評価を行った.本研究の達成により放射線治療中の標的や臓器の位置が同定可能となり,治療中の投与線量や分布を再評価することが可能となった.また,治療用ビームのアイソセンタを評価するWinston-Lutzテストとガントリ角度に対するEPIDのダレの記録(Flexmap)を同時に実施する方法を構築し,QAQCを実施した.一方,数値ファントムおよび動体ファントムによる定量評価,再構成した治療中における対象内構造から標的や臓器の同定,実線量分布を作成および評価は今後の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は次の項目について研究を実施する予定である. (1)数値ファントムを用いて標的の動きが再構成画像に与える影響を検証する.(2)動体ファントムに対してVMATを用いたSBRTを実施し,投影画像の収集を行う.(3)収集した投影画像からCBCT画像の再構成を行う.動体ファントム内の標的の速度が画像再構成に与える影響を考察する.(4)再構成した治療中における対象内構造から標的や臓器の同定を行い,実線量分布を作成する.照射部位が呼吸性運動を有する場合,呼吸位相の分割や位相ごとに線量分布の再計算を行う必要がある.(5)治療計画の線量分布と治療中の実線量分布とを比較する.両者に大きな違いがある場合には原因の追及および解決を行う.(7)動体ファントムの実験結果に問題がないと判断された後,動体ファントムと同様の手順でヒトに対してVMATを用いたSBRTを実施し,実線量分布を評価する.得られた実線量分布と治療計画の線量分布とを比較する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では,画像再構成プログラムの構築や治療中の投影画像からCBCT画像を再構成し,CBCT画像の処理を行うため数値計算機が必要不可欠であり,解析用ワークステーションを設備備品費として計上した.しかし,希望のスペックの解析用ワークステーションが比較的安価に購入可能であったため,当該研究費が生じた.また,本年度では国際学会発表の締切時期が研究進展と合致せず,国際学会への参加を見送った.翌年度以降において,PCの増設,国際および国内学会の参加予定である.また,国際論文の投稿を目標として,英語論文の作成で必要な校閲費用を英語校閲費として計上しており,有効に活用する予定である.
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