研究課題/領域番号 |
24601005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今江 禄一 東京大学, 医学部附属病院, 診療放射線技師 (80420222)
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キーワード | 回転型強度変調法 / 体幹部定位放射線治療 / 治療中 / 対象内構造 / 実線量分布 |
研究概要 |
回転型強度変調放射線治療(volumetric modulated arc therapy:VMAT)は,治療中に診断用kV-X線および治療用MV-X線の投影画像からコーンビームCT(cone beam CT:CBCT)画像を再構成することが可能であり,治療中の臓器の位置を同定することが期待されている.本研究では,VMATを用いて体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiotherapy : SBRT)を実施し,治療中における対象内の構造を同定した上で,実際に標的に与えられた吸収線量および対象内の線量分布(実線量分布)を評価することを最終的な目的とした.本年度は以下のことを実施した. (1)投影画像を収集するポータルイメージングシステム(electronic portal imaging device : EPID)の品質保証や品質管理は高精度な放射線治療を実施する上で重要な項目である.本研究では回転照射法を用いた方法を開発した.また,研究成果について論文化を行った.治療中のCBCT画像はEPIDによって収集された投影画像から再構成されるため,EPIDの管理はCBCT画像の画質改善につながる. (2)治療中に収集される投影画像数には限りがある.投影画像から再構成されるCBCT画像の画質改善は治療中の線量評価において重要な課題である.本研究では再構成画像に光子の散乱や吸収の補正が可能な逐次近似法を用いて4次元化したCBCT画像の再構成を行い,成果をまとめた. (3)VMATの線量計算を行うアルゴリズムはいくつか提案されている.そのうち精度が高い計算方法として期待されているモンテカルロ法を用いて,VMATにおける新しい独立検証法を確立した.また,この方法を用いて前立腺,肺,頭頸部を対象として解析し,その結果を論文化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はポータルイメージングシステム(electronic portal imaging device : EPID)の品質保証および品質管理,CBCT画像の画質改善,新しい独立検証法に関する研究をおこなった.また,治療中の線量分布を再構築する手法について研究中である.これは,VMATを用いたSBRTを動体ファントムおよび臨床例に対して実施し,治療中に呼吸曲線および照射制御パラメータを取得することによって達成される.これについては成果がまとまり次第,論文化する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
治療中に取得した呼吸曲線および照射制御パラメータから治療計画用CT画像を用いて実線量分布を再構築する方法は試験中であるが,線量計算に治療中のCBCT画像を用いるのは今後の課題である.CBCT画像の画質が計画用CTと比較して低く,CT値も安定しないため,線量計算に用いるためにはいくつかの改善項目がある.また,数値ファントムおよび動体ファントムによる定量評価,再構成した治療中における対象内構造から標的や臓器の同定も今後の課題である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では計算機が必要不可欠であるが,希望のスペックの解析用ワークステーションが比較的安価に購入可能であったため,当該研究費が生じた.また,本年度は国際学会発表の締切時期と申請者の予定と合致せず,国際学会への参加を見送った. 翌年度以降において,PCの増設,国際および国内学会の参加予定である.また,国際論文の投稿を目標として,英語論文の作成で必要な校閲費用を英語校閲費として計上しており,積極的かつ有効に活用する予定である.
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