H26年度は,異常部位を自動検出する診断支援機能部の開発,開発した画像解析プログラムをノートPCに搭載した「診る聴診器」の試作,肋骨陰影を除去した動画像(=軟組織動画像)を対象とした動態解析の初期検討,を行った.以下にその概要を示す.
まず,「正常パターンからの逸脱」もしくは「同一症例における左右肺での非対称分布」を根拠に異常部位を検出するために,肺換気・肺血流・肋骨運動について,正常値と異常値を識別するパラメーターを検討した.その結果,正常症例では,各計測値の変化量(/frame)が横隔膜移動量(/frame)と高い相関を示すのに対し,異常症例では低い相関もしくは相関がみられないことから,これらの相関係数の低下を「正常パターンからの逸脱」として異常検出するアルゴリズムを開発した.また,「同一症例における左右肺での非対称分布」についても同様に,左右対称的な位置での計測値の変化量(/frame)の相関係数の低下を「同一症例における左右肺での非対称分布」とし,異常検出するアルゴリズムを開発した.一方,肋骨陰影除去法を動画応用の初期検討を,昨年度に引き続き行った.静止画用に開発された手技を,本研究で取得したX線動画像に適用し,肋骨陰影を抑制した動画像(=軟組織動画像)と,肋骨陰影を抽出した骨動画像を作成した.これまでに,通常のX線動画像の動態解析用に開発してきたプログラムを,軟組織動画像に適用することで,解析精度が著しく向上することを明らかにした.症例数を増やした更なる検証が必要である.
これらの研究成果は,日本放射線技術学会総会学術大会(JRC2014),コンピュータ支援放射線・外科手術学会(CARS2014),欧州放射線学会(ECR2015)にて発表した.また,今後,ふくしま医療福祉機器開発事業に参画し,本申請課題で得られた知見を救急用の医療機器開発に応用していく予定である.
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