研究課題/領域番号 |
24601009
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
宮地 利明 金沢大学, 保健学系, 教授 (80324086)
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研究分担者 |
間瀬 光人 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60238920)
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キーワード | 医療・福祉 / 脳・神経 / 脳神経疾患 / 磁気共鳴画像(MRI) / バイオメカニクス / ハイドロダイナミックス / 水分子揺動 / 脳血流 |
研究概要 |
今年度は,頭蓋内環境解析法を統合して開発した揺動MRIの新規解析手法を人体とファントムによって検証した. ECG-synchronized single-shot diffusion EPI法(b=0,200,600,1000 s/mm2)で人の脳を撮像し,b値の組み合わせを変えて約20心時相の見かけの拡散係数(ADC)画像を取得した.この画像データから前頭葉白質領域おける心周期のADCの変化量(ΔADC)および最大値と最小値を算出した.同時に脳血流測定法であるpulsed-continuous arterial spin labeling法を使用して同一領域の局所脳血流量(rCBF)を測定し,rCBFと最も相関の強いADCによってΔADCを補正した(血流自己補正揺動MRI).さらに独自に開発した頭蓋内評価用ファントムで検討した. 先ず,心周期のADC変化量とrCBFはよく一致したことから,ΔADCはrCBFによる補正が必要なことを確認した.b値を0と200s/mm2にした心周期の最大ADCがrCBFと最も強い正の相関が認められたので,この最大ADCからrCBFを導出可能でありΔADCの血流補正が可能なことを実証した.実際にこの最大ADCで補正した後の心周期のADCの変化量とrCBFの間に相関は認められなくなったので,血流自己補正揺動MRIは,血流評価が可能になると同時に血流に依存しない水分子揺動情報を取得できると結論付けた.以上のことは,ファントムの実験によっても同様の結果が得られた. 揺動MRIを行う際に低いb値で心周期の最大ADCを同時測定すれば,追加の脳血流測定を行わなくても心周期の拡散情報から血流情報が取得可能なことに加えて揺動MRIの血流の影響を自己補正が可能になったことは,本研究課題を推進する上で意義深いものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究目的「磁気共鳴画像(MRI)診断装置を用いて申請者の各種頭蓋内環境解析法を統合させながら新規の解析手法を開発し,頭蓋内環境を総合的に評価するシステムを確立し診断情報として利用する」の内の「新規の解析手法(血流自己補正揺動MRI)を開発し,頭蓋内環境を総合的に評価するシステムを確立する」を達成できているため.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に開発した頭蓋内環境統合解析法である血流自己補正揺動MRIを,他の頭蓋内環境評価法を含めて比較しながら,統合解析を試みる.またこれら手法の正常圧水頭症を中心とした臨床検討を行う.昨年度同様に独自に開発したファントムを使用して各パルスシーケンスをbrush upするとともに,撮像パラメータの最適化を図る.ボランティアデータと臨床例についてはそれぞれまとまりしだい学会発表し論文投稿を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の論文の完成が次年度にずれ込んだので,外国語論文の校閲経費が次年度に追加で必要になったため. 物品費:本研究で取り扱う膨大な画像データと解析データを確実に保存・整理する必要があるため,蓄積したデータが大量になる次年度に100千円を計上した. 旅費(研究打ち合わせ,資料収集,成果発表):研究打ち合わせ,資料収集と成果発表を合わせて950千円を計上した. 人件費・謝金:研究を効果的に進展させるために専門的知識の提供の経費と,研究成果を英語論文として報告するために外国語論文の校閲経費と研究成果投稿料を50千円計上し,さらに完成が次年度にずれ込んだ外国語論文の校閲経費57,125円を追加で計上した.
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