研究課題/領域番号 |
24601010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
池田 充 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50184437)
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研究分担者 |
今井 國治 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20335053)
川浦 稚代 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60324422)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | X線CTの画質評価 / X線CTの被ばく線量 |
研究概要 |
X線CT画像におけるMTFとNPSについて、カスケード線形システム理論によるモデルを用いて、それぞれの定式化を行い、エリアシングの関与を無視することによって、それらの間の解析的な関係式を導出した。ここで、X線CT画像におけるNPSについて、周波数0における値はエリアシングに由来するものであることが示されているが、NPS推定におけるエリアシングの関与がどの程度であるのかについてはあまり検討されていなかった。そこで、NPS推定におけるエリアシングの関与について、仮想的なCT装置を使用したシミュレーションCT像からのNPSについて、数値計算による検討を実施した。我々が検討した画像形成モデルに従って数値計算したNPSからは、エリアシングの影響が比較的高い部分があること、エリアシングの関与は無視できるレベルのものである、ということが示された。また、周波数0におけるNPSの値はエリアシングによるものであることが再確認された。この検討結果は、我々が導出したX線CT画像におけるMTFとNPSの関係式の有効性を裏付けるものとなった。 一方、CT画像における雑音の一つの評価方法である標準偏差(SD)は、X線CT検査時の被ばく線量と密接に関係するものであるが、CT画像における雑音をX線検出器に到達したX線の光子ゆらぎによるもののみとした場合において、CT画像の個々の画素における雑音SDについて再構成関数を使用して定式化を実施した。そして、この雑音SDの定式化の精度に関して、仮想的なCT装置を使用したシミュレーションによって検討した。この検討結果から、今回実施した定式化の精度は比較的高いこと、CT画像における雑音SDの分布画像は多くの場合元画像をぼかしたような画像となること、この雑音SD分布画像と実際の雑音SDの分布との差からビームハードニングに由来する雑音を推定できる可能性があること、がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
X線CTにおけるMTFとNPSについての理論的な再検討において、その精度の検討に関して実際の市販のCT装置を使用して測定したデータによる検証を進めたが、この検証作業において予想外に時間がかかってしまった。また、この検証作業において、エリアシングの関与に関する検討は実際のCT装置から得られるデータでは検討できないため、仮想的なCT装置を使用したシミュレーションによる検討が必要となった。この仮想的なCT装置を使用したシミュレーションによる検討では新規のプログラム開発が必要となったが、このプログラムの作成に予想外の時間を要した。さらに、このシミュレーションにおいて実際のX線CT装置に使用されるX線のスペクトルデータが必要となったが、このデータの入手が非常に難しく、このこともシミュレーションによる検証作業の実施に時間を要する原因の一つとなった。 このため、実際のX線CT装置とファントムを使用した被ばく線量に関する検討が当初の計画のようにはできずかなり遅れたものとなってしまった。しかしながら、被ばく線量と直接的な関係のある雑音SDに関する理論的な解析については、上記の検討過程を通じてかなり進展が認められ、本研究の主目的である「胸部X線CT検査における画質評価指標と被ばく線量の関係」について本質にせまる検討ができる見通しを得ることができた。従って、この部分については、当初の計画外の進展が認められたと自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
青山らにより考案され作成されたシステムを用いて、名古屋大学医学部附属病院に設置してある(市販の)X線CT検査装置を使用して、被ばく線量測定用ファントムを用いた被ばく線量の測定と、画像評価指標を実測するための同ファントム画像の撮影について、今後も引き続き実施する。被ばく線量は、測定に使用するX線CT検査装置において許容される範囲内の各種の管電流と管電圧にて測定を実施する。ここで、被ばく測定した各管電圧に対して、使用したX線の実効エネルギを測定しておく。また、X線CT装置において照射されるX線のエネルギスペクトルについて、実際のものに近いものが得られるように測定方法に関する検討を実施するとともに、シミュレーションを加味した検討を実施する。 仮想的なCT装置を使用したシミュレーションの精度の向上をはかるため、同仮想CT装置に関するプログラムの再検討を実施する。そして、同シミュレーションの空間分解能の飛躍的な向上と計算速度の向上をはかるため、高速大容量の計算機の利用ができるように名古屋大学情報連携基盤センタの計算機へのプログラムの移植についての検討を実施する。そして、シミュレーションによるデータの収集においては、同計算機を使用して実施するようにする。 上記の実測からのデータとシミュレーションによって得られたデータとを用いて、理論的に考案したX線CTにおけるMTFとNPSの間の解析的な関係式とCT画像の個々の画素における雑音SDを与える理論式ついての精度の検証を進めていく。そして、これらの検討結果をもとに、多列検出器CTにおける撮影パラメータを考慮して、単独の撮影画像から推定される雑音分散から各臓器線量・実効線量を予測する関係式の作成に着手する。さらに、その精度を評価するとともに、同関係式において、考慮する多列検出器CTにおける撮影パラメータの数の最小化についての検討も実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ワークステーションの購入費として使用するとともに、名古屋大学情報連携基盤センタの計算機の使用料として使用する予定である。
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