X線CTの画像再構成過程を計算機シミュレーションする際の離散的処理における誤差に関して、各種の計算方法について検討した。この結果、投影切断面定理による不均等離散フーリエ変化を経由した数値計算によって得られるサイノグラムが、角度依存性のない最も精度のよいものであることがわかった。ここで、離散フーリエ変換の計算に高速計算法を使用すると、投影角度の依存性が認められるとともに精度が低下することもわかった。 さらに、CT画像の各画素の領域で吸収される光子数を撮影時のX線束に沿った質量減弱係数を使用して近似的に計算する方法について、頭部CTDIファントムと早期脳梗塞を模したファントムに相当する数値ファントムを使用して、実測データとほぼ同等の結果が得られることを検証したモンテカルロシミュレーションによって吸収線量を推定した結果との比較検討を行った。モンテカルロシミュレーションによる推定結果や実測した結果と比較して、ファントムの表面下1 cmの位置の中心部に対する吸収線量の割合に関して、提案する方法では最大で約1.3倍過大評価していたが、各画素領域における吸収線量に関しては、両者間に、値自体には大きな差があったが、強い線形相関が認められた。 また、X線CT画像における雑音の統計的な性質について検討した結果、X線吸収に対する性質がかなり異なるものから構成される被写体に対しては、画素間の相関は総じて少ないが使用する再構成関数によっては強い相関が認められること、雑音の分布について正規分布に従うとは言えない場合がかなり多いこと等がわかったが、軟部組織で構成された被写体に対しては、画素間にあまり相関が認められず、また雑音の分布についてはおおむねある正規分布に従うことが予想される結果となり、「正規分布に従い画素間で統計的に独立である」という仮定は妥当なものであることがわかった。
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