研究課題
基盤研究(C)
PET(陽電子放出断層撮像法)は様々な生体機能の検査やがん診断等に有用な手法だが、その有効性はPET装置物理特性にかかわる品質管理(QC・QA)に支えられ、中でも重要なのが定量性にかかわる評価・校正である。しかし、ファントムを用いる従来手法は信頼性・利便性に限界があり臨床・研究の現場におけるPETの定量性には大きな改善の余地が残るのが現状である。本研究は、トレーサブルな点状線源を用いる新しい定量性評価・校正法を開発することにより、従来手法の限界を打破しPET装置の性能を最大限に発揮させるための基盤構築に資することを目的とする。本年度は以下の成果を得た。(1)点状線源の開発:点状線源自体の品質管理のため、マイクロフォーカスX線イメージング手法を用いる線源内部構造評価手法を開発し(学会発表及び原著論文発表)、その応用の道も拓いた(学会発表)。また、Ge-68点状線源については、製造技術にかかわる研究を大きく進展させた(現時点では事情により非公表)。また、モンテカルロシミュレーション法他に基づき点状線源の最適な使用方法や使い分けにかかわる検討も着実に進めた。(2)定量性評価・校正法の開発:トレーサブル点状線源を有効視野中心部に設置して校正定数を決定する基本的手法を多施設多種PET装置対象に検証した(学会発表及び原著論文発表)。さらに、同一点状線源を用いる一様性ならびに感度の評価法(学会発表)、臨床現場における定期的品質管理への応用(学会発表予定)、ファントムと組み合わせる新しい定量性評価法(学会発表予定)などの開発を進めた。(3)多施設連携:新たな協力施設を得て研究を展開し、国内外での学会発表を積極的に進めた。以上の実績は織田圭一(健康長寿医療センター研)、佐藤 泰(産総研)、宮武比呂樹他(北里大病院)、他多数の研究協力者との連携によるものである。(以上、敬称略)
1: 当初の計画以上に進展している
当初の平成24年度研究実施計画は(1)点状線源の開発、(2)定量性評価・校正法の開発、(3)連携の拡大、以上の3項目から構成される。(1)については、モンテカルロシミュレーション法を用いた評価ならびに物理特性にかかわる考察に基づきGe-68点状線源とNa-22点状線源の相補的な利用法を明らかにして研究計画を進めることができた。また、マイクロフォーカスX線イメージング手法による線源内部構造の評価法を確立し、Na-22点状線源の非破壊的な内部構造評価を実現するとともに同手法を放射線治療用小線源の内部構造評価へと応用する道を拓いた。Ge-68点状線源については、研究協力者の佐藤 泰(産業技術総合研究所)らとの共同研究により新しい製造法の考案に至り、同手法に基づく点状線源試作を次年度以降と位置づけた。(2)については、トレーサブル点状線源を有効視野中央部に設置して校正定数を決定するという基本的校正法を、多施設多機種装置を対象とした検証により確立するとともに、ファントムと点状線源を組み合わせる手法、同一トレーサブル点状線源をその他の性能評価に活用する方法など、発展的手法の開発を想定以上に着実に進めて成果を得ることができた。(3)については、トレーサブル点状線源を用いる定量性評価・校正法の開発研究にかかわる新たな協力施設を得て、さらなる多施設研究を展開する道筋を広げることができた。以上のとおり、全般的にほぼ期待通りの成果が得られたとともに、当初の研究計画の想定を超えて展開され成果を得た研究項目もある。研究の進捗状況を総合的に考えると、当初の計画以上に進展していると判断できる。(以上、敬称略)
平成24年度の研究計画が順調に進展したことを受けて、今年度(平成25年度)以降についても、ほぼ当初の交付申請書における研究実施計画に即して研究を進めることを推進方策とする。すなわち、研究計画は(1)トレーサブル点状線源の開発、(2)定量性評価・構成法の開発、(3)多施設連携の展開、以上の3項目から成る。(1)では、佐藤 泰(産業技術総合研究所)、山田崇裕ら(日本アイソトープ協会)他との共同により新しいトレーサブルなGe-68点状線源の実用化に関わる研究を進める。また、線源の標準化に向け線源内部構造を評価する手法の開発ならびにその応用研究もさらに展開する。また、モンテカルロシミュレーション手法を活用する線源物理特性の評価に関わる研究も進め、様々な点状線源の相補的で最適な使用法を明らかにする。(2)では、トレーサブル点状線源を有効視野中心部に設置し校正定数を決定する基本的手法に加え、国際的標準的プロトコルにおける性能評価項目の一部を改善する手法、ファントムと組み合わせる手法、臨床用装置の日常的なQCに活用する手法など発展的手法の開発と検証もさらに進める。(3)では、既に多施設(北里大学、北里大学病院、産業技術総合研究所、日本アイソトープ協会、東京都健康長寿医療センター研究所、理研分子イメージングセンター、がん研有明病院、岩手医科大、神奈川県産業技術センター他)に展開している連携体制を、国内外での研究成果発表の機会、学術団体での活動、研究者間での個人的なネットワークなどを利用しさらに広げていくことを目指す。以上により、トレーサブル点状線源を用いる新手法の有用性を明らかにし、PET装置の定量性評価・校正の利便性・信頼性を格段に向上させるためのQC基盤構築に資することを目指す。(以上、敬称略)
前年度(平成24年度)未使用額が生じたのは、Ge-68点状線源の製造法にかかわる本研究に直結する有益な開発研究に大きな進展が生じたことを受け、後述する通りGe-68点状線源の試作にかかわる費用を平成25年度以降の執行としたためである。次年度(平成25年度)の研究費の使途は、(1)トレーサブル点状線源の試作・特別注文にかかわる費用、(2)放射線源の保管・運搬・安全取り扱いにかかわる費用、(3)定量性評価・校正法の開発にかかわる費用、(4)研究成果発表等にかかわる費用、(5)その他の費用に分けられる。(1)としては、佐藤 泰(産業技術総合研究所)、山田崇裕ら(日本アイソトープ協会)他との共同研究によるGe-68点状線源の製造法の開発を受けたGe-68点状線源の試作費用(新しい製造法の開発を展開しているため、平成26年度となる可能性も想定)、特別注文によるNa-22点状線源の購入費用他を見込む。また、研究の進捗状況に応じて市販Ge-68点状線源の購入も考えられる。(2)としては、実験や放射線源の運搬時における放射線安全管理に必要な線量当量測定用ハンディサーベイメータの購入費用、放射線源保管・運搬用シールド等にかかわる費用他を見込む。(3)としては、点状線源と組み合わせて定量性評価・校正を行う新手法の開発の中で改良が必要となる専用ファントムの試作・製造費用等を見込む。(4)としては、国際学会での発表・情報収集等のための旅費・参加費、英文での成果発表等にかかわる英文校正費用他を見込む。(5)としては、研究の進捗状況に応じて、研究打ち合わせ費用、プリンター消耗品費用、データ解析・文書処理用PCの購入費用他が見込まれる。なお、研究の進捗状況や新たに生じた研究成果に基づき、上に明記しない費用が生じることも想定している。(以上、敬称略)
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