研究課題/領域番号 |
24601015
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
村石 浩 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (00365181)
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研究分担者 |
原 秀剛 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (80381424)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射線がん治療 / 治療計画 / 重粒子線CT |
研究概要 |
本研究では、重粒子線がん治療計画精度の向上を目的として、被写体内の電子密度分布を短時間で測定可能な「増感紙-EMCCDカメラによる重粒子線CT」の検討を行っている。これまでの放射線医学総合研究所がん治療用重粒子線加速器(HIMAC)共同利用による実験的検討により、φ11cmの被写体サイズに対して、相対電子密度分解能σ=0.85%の断層像を10分程度で撮影可能であることを実証したところである。一方で、HIMAC生物照射室における現状の炭素線ビームライン使用条件(400MeV/u、φ10cm一様照射)では、実際の頭頸部がん治療計画を想定したφ20cmクラスの被写体撮影は原理的に困難となっている。今後、厚さ20cmの大型被写体撮影を遂行するためには、まずは、より高いエネルギーを維持しつつ大口径の一様照射が可能な拡大照射ビームラインの設計を行う必要がある。そこで、平成24年度においてはGeant4を用いたモンテカルロシミュレーションにより、重粒子線CT撮影のための拡大一様照射ビーム形成の可能性について調査を行った。 具体的には、7 つのパラメータ(①被写体厚r_c[cm]、②一様照射ビームの口径φ[cm], ③炭素線エネルギーE [MeV/u]、④散乱体-被写体間距離R[m]、⑤散乱体の材質M、⑥散乱体厚r_s[mm]、⑦レンジシフタの最小厚r_r[cm])について、シミュレーションにより事前調査を遂行した。その結果、HIMAC共同利用で照射可能な炭素線の最大エネルギー430MeV/uを用いることにより、現状の散乱体-被写体間距離R=9[m]であっても、散乱体厚r_sを若干変更し、更にレンジシフタの最小厚をこれまでの4cmから2cmまで縮小可能なダイナミックレンジシフタを新たに開発すれば、φ20cmの拡大一様照射ビーム形成が可能であることがシミュレーションにより示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の最終目標は、我々が提案する「増感紙-CCDカメラによる重粒子線CT」を用いて、頭部放射線がん治療計画を想定した厚さ20cmの大型被写体のCT撮影が可能であるかについて、「実験的評価」を遂行することである。その第一段階として、我々が提案する重粒子線CT撮影に必要な拡大照射ビーム形成がそもそも可能であるかについての事前調査が必要である。そこで、初年度である平成24年度において、まずはシミュレーション実験により、その可能性について調査を行った。その結果、現状システムに修正を加えることにより、既存のHIMAC生物照射室炭素線ビームラインにおいてCT実験の遂行が可能であることが明らかとなった。一方、「厚さ20cm クラスの大型分解能評価ファントムの製作」を平成24年度に遂行することを当初予定していたが、平成25年度に予定を変更することとなった。理由としては、本ファントムはシミュレーション実験の結果を踏まえて製作する必要があったことや、シミュレーション実験に予想以上の時間を要したこと、などが挙げられる。いずれにせよ、初年度の研究成果として実際の加速器実験の遂行が現実的となったことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
1.厚さ20cmクラスの大型分解能評価ファントムの製作~実際の重粒子線CT照射実験に備え、頭部放射線がん治療計画を想定した厚さ20cmクラスの重粒子線CT用分解能評価ファントムを製作する。本CT手法は、照射ビームに対して垂直に設置された増感紙をCCDカメラで撮影するので、2次元投影情報を一度に収集することができ、結果として、3次元画像再構成が可能である。今回製作する評価ファントムは、ビームラインに沿った被写体の深さ方向の分解能評価だけでなく、ビームラインに垂直な方向の分解能評価を同時に遂行可能になるよう設計する。 2.厚さ20cmクラスの大型被写体撮影のためのダイナミックレンジシフタの製作~前年度のシミュレーション実験により導出されたさまざまなパラメータ条件に従って、実際のダイナミックレンジシフタ(重粒子線エネルギーをリアルタイムで変調する装置)の設計、及び製作を行う。この製作された新システムを用いて、北里大学医療衛生学部に設置された診断用X線透視装置により動作テストを行う。更に、実際のHIMACを用いた照射実験を遂行し、口径20cm一様照射ビーム形成について実験的評価を行う。 3.厚さ20cmクラスの大型被写体(分解能評価ファントム)のCT撮影~上述2で確立された口径20cm一様照射野ビームによる新システムを用いて、上述1で製作したファントムのCT撮影を遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主な大型備品は以下の通りである。 1.「大型分解能評価ファントム(1台×60万円)(北里大学)」 2.「重粒子線エネルギー変調&一様照射野形成システム(1台×100万円)(北里大学)」
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