研究課題/領域番号 |
24601017
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
橋本 成世 公益財団法人がん研究会, 放射線治療部, 医学物理士 (40375845)
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研究分担者 |
西尾 禎治 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, その他 (40415526)
花田 剛士 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30571054)
芳賀 昭弘 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30448021)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 外部照射 / 放射線測定 / プラスチックシンチレータ |
研究概要 |
強度変調放射線治療といった経時的に線量分布が変化する放射線治療法が普及しているが、3次元線量分布の時間変化が検出できる4次元線量分布測定器はない。申請者達は新たにプラスチックシンチレータ(PS)から得られるシンチレーション光を外部からビデオカメラを用いて取得し、収集光量の時間変化を追うことで4次元線量分布が取得できる測定器を提案した。H24年度の実施内容と成果は以下の通りである。 1)収集光量の特性評価:ビデオカメラで収集されたシンチレーション光の光量(収集光量)とX線の照射線量の間には関係性が認められ、収集光量から線量を評価可能であると確認した。 2)小型円柱PS+周囲鏡による測定器の試作機制作と線量分布検証:小型円柱PS周囲に鏡を配置した試作機を作成し、円柱PS上面からのX線照射による収集光量から深部線量と軸外線量を求めた。電離箱線量計やフィルムで測定した深部線量と軸外線量と同様の結果を得ることができた。また、周囲鏡からの360度分の投影像を用いて線量分布の3次元再構成を実施した。その結果、本検出器では円柱PSの中心軸近傍から発生したシンチレーション光しか鏡に投影されず、収集量不足のために3次元再構成を行うことが難しいと判明した。 3)発光波長の異なるPSの積層による測定器の線量分布検証:アクリル積層ファントムに発光波長の異なる3種類のPSを深さの異なる位置に挿入し、ファントム上面からX線を照射した際の下面から3つの異なる波長が混在したシンチレーション光を収集した。後処理によって波長弁別(色弁別)することで異なる深さの線量プロファイルを一度に取得する検出器制作の可能性を示すことができた。 H24年度の研究成果から発光波長の異なる多色のPSを積層し、様々な深さの線量プロファイルを一度に取得することで、4次元線量分布測定が行える可能性が示唆された。以上の結果は国内学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H24年度は研究計画に則し、ビデオカメラで得られるシンチレーション光の特性評価と4次元線量分布測定器の試作機を用いた線量分布再構成に関する検討を行った。研究計画ではH24年度において検出原理を確立し、H25年度以降において4次元線量分布測定器の実機を作成する予定であったが、H24年度の検討結果から当初考えていた検出器の形状では4次元線量分布測定が難しいと判明した。以上の事由により、自己点検による評価を「(3)やや遅れている」とした。しかしながら、当初計画していた予定を早めに遂行することができたことにより年度内において検出器の再考を行うことができ、深さ毎にシンチレーション光の発光波長を変える方法で4次元線量分布測定が可能という結果を得ることができた。H25年度では、この測定手法を用いた4次元線量分布測定器の実現可能性を更に調査し、実機の作成を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度の研究結果から、発光波長の異なるシンチレータを積層することで4次元線量分布測定ができる可能性があると示された。H25年度では、何種類かのPSを積層することで、深さ方向の分解能がどの程度得られるかを検討する。シンチレーション光の色の識別法として、ビデオカメラで得られる画素値のRGB成分で弁別する方法と、色付きのレンズフィルタを用いて弁別する方法があるが、どちらがより高い精度で線量分布が取得できるかの検討も行う。また、使用するシンチレーション光の発光波長に応じて、感度が適したCCDカメラが必要となるので、PSの組み合わせと同時にCCDカメラの選定も行っていく。CCDカメラはbit数が高い方が1フレームあたりに収集される光量が広い階調で表現できる。一般的なデジタルビデオカメラでは8bit(256階調)であるが、16bitのカメラでは65536階調を得ることができる。4次元線量分布測定を行う場合、1フレーム毎に線量に変換していく都合上bit数が高い方がより良い精度で線量分布を得ることが可能だと考えられる。しかしながら、16bitのCCDカメラではパーソナルコンピュータに信号を送信するのに時間がかかるために時間分解能が低下する。線量分布の精度と時間分解能は相反する関係にあるため、4次元線量分布測定に適するbit数がどの程度必要かも検討を行っていく。以上の検討により4次元線量分布測定器の構成を決めて実機の作成を行う。また最終的には他の検出器との相互比較等の総合試験を通し精度向上を図る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の研究費でCCDカメラや再構成を行うためのソフトウェアを購入する予定であったが、現有のデジタルビデオカメラを利用した試作機の評価によって、当初考えていた検出器では4次元線量分布測定が難しいとの結論を得た。そのため、CCDカメラやソフトウェアの購入を見送り当該研究費が生じた。当該研究費においては、H25年度の検討に使用する発光波長の異なるPSやCCDカメラの購入に使用する。当初予定していた購入物品とは大きな変更は生じない。また、H25年度の予算と合わせて4次元線量分布測定器の作成に使用する。
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