研究課題/領域番号 |
24601017
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
橋本 成世 公益財団法人がん研究会, 有明病院放射線治療部, 医学物理士 (40375845)
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研究分担者 |
西尾 禎治 独立行政法人国立がん研究センター, 東病院臨床開発センター, ユニット長 (40415526)
花田 剛士 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30571054)
芳賀 昭弘 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30448021)
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キーワード | 放射線治療 / 外部照射 / 放射線測定 / プラスチックシンチレータ |
研究概要 |
ダイナミックウェッジや強度変調放射線治療といった経時的に線量分布が変化する放射線治療法が普及しているが、3次元線量分布の時間変化が検出できる4次元線量分布測定器はない。申請者達は新たにプラスチックシンチレータ(PS)から得られるシンチレーション光を外部からビデオカメラを用いて取得し、収集光量の時間変化を追うことで4次元線量分布が取得できる測定器を提案した。H25年度の実施内容と成果は以下の通りである。 1)発光波長の異なるPS積層ファントムによる線量分布検証:発光波長の異なるPSを積層してPS上面からX線を照射すると、複数の波長が混在したシンチレーション光をPS下面から得ることができる。後処理によって波長弁別(色弁別)することで異なる深さの線量プロファイルが得られるか検討した。結果、発光波長が異なるPSはPS自体に発光波長に応じた着色がされており、上流側で発光したシンチレーション光は下流側に存在するPSによって光が吸収されてしまい、弁別することが難しいと判明した。 2)小型円柱PS+周囲鏡による試作機を用いた線量分布検証:逐次近似再構成法を用いてPS内部の吸収線量分布が取得できるか検討した。試作機の周囲鏡及び小型円柱シンチレータの底面から得られるシンチレーション光とPS内部の吸収線量分布を比較した。その結果、周囲鏡に投影されるシンチレーション光は、シンチレータ内の3次元的な吸収線量分布の積算値と関連性があり、シンチレータ下面から得られるシンチレーション光は、深さ毎の線量プロファイルが重なりあったものに相当することが分かった。これら2つの情報を基にして逐次近似再構成を行うことで、PS内部の吸収線量分布を得ることができると示唆された。 H25年度の研究成果から小型円柱PS+周囲鏡から得られるシンチレーション光を逐次近似再構成することにより4次元線量分布測定が行える可能性が示唆された。以上の結果は国内学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H25年度において臨床で多く用いられている照射野サイズに対応できる4次元線量分布測定器を制作する予定であったが、H24年度の検討で逆投影法による再構成が困難なこと、そしてH25年度の検討で波長弁別による手法も困難なことが明らかとなり、検出原理を確立することができなかった。そのため、4次元線量分布測定器の制作を行うことができなかった。以上の理由により、自己点検による評価を「(3)やや遅れている」とした。しかしながら、H25年度の検討において逐次近似再構成法の実現性が認められ、現在再構成法の構築を進めている段階である。本方法を用いて再構成が可能であれば、H26年度には4次元線量分布測定器の作成が可能であり、申請書に記載した総合試験を行うことが可能だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度の研究結果から、逐次近似法を用いて試作機から得られるシンチレーション光を再構成することで4次元線量分布測定が行える可能性が示唆された。H26年度において再構成法を構築し、実測値あるいは治療計画装置等で得られる計算値と比較することで再構成精度の評価を行う予定である。十分な再構成が行える事を確認した上で、臨床で多く用いられている照射野サイズに対応できる4次元線量分布測定器を制作し、他の検出器との相互比較等の総合試験を通し精度向上を図る予定である。試作機では汎用のデジタルビデオカメラを用いているが、4次元線量分布測定器では1フレーム毎に再構成を行う必要があるためにbit数が高いCCDカメラの方が良い精度で線量分布を得ることができる。しかしながら、bit数が高いCCDカメラは信号をパーソナルコンピュータに送信するのに時間がかかるために時間分解能が低下する。また測定器の形状に依っても適したCCDカメラが異なることから、4次元線量分布構成が求まった上で上記の特性を考慮し適切なCCDカメラの選定を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の研究費でCCDカメラや再構成を行うためのソフトウェアを購入する予定であった。また、H25年度の研究費で4次元線量分布測定器の制作を行う予定であった。しかしながら、現有のデジタルビデオカメラを利用した試作機の評価によって、当初考えていた検出原理では4次元線量分布測定が難しいとの結論に至り、H25年度の検討においても波長弁別で4次元線量分布測定を行うことが難しいとの結論を得た。検出原理が確立できなかった為にCCDカメラの購入や4次元線量分布測定器の制作を行うことができず、当該研究費が生じた。 H25年度の検討においてH24年度に使用した試作機を用いることで、4次元線量分布測定が行える可能性があることが示唆された。H26年度では本手法の検討を進めていき、当該研究費を用いてCCDカメラの購入や臨床で多く用いられている照射野サイズに対応できる4次元線量分布測定器の制作を行う予定である。また、総合試験における消耗品にも使用する予定であり、当初予定していた購入物品とは大きな変更は生じない。
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