研究課題/領域番号 |
24601021
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
中野 厚史 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (90217787)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 酸化LDL / 動脈硬化 / 画像診断 / 小動物イメージング |
研究概要 |
動脈硬化等、循環器系疾患の重篤な危険因子である、酸化LDLの詳細な体内動態については、不明な部分が数多く残されている。本年度は、今後の研究計画を遂行する上での重要な手技である、[123I]oxLDLの標識法の確立を行った。即ち123Iヨウ素を酸化LDLに標識する手法として、直接法であるICL法、Chloramine-T法、間接法であるHYNICを用いた手法での標識率や収率、安定性、酸化LDLの変性があるかを調べた。その結果Chloramine-T法を応用し新たに開発した標識手技が、安定して高い収率での[123I]oxLDLを作成可能であることが判明した。ただし、標識率と収率に関しては、試したすべての手法に於いてCarrierとして添加するCold NaIとHot Na123Iの比が大きく関わっており、使用目的に応じてこの比を調整して標識を行うこととした。即ち、細胞活性や臓器分布では収率に重点をおいて、Coldの割合を増やした手法で、SPECTを用いた非侵襲計測においては標識率に重点をおいたHotの量の多い状態で標識行うこととした。尚、Carrier Freeでも行ったが標識率・収率が安定しないため、CarrierであるCold NaIは微量ではあるが添加することとした。 さらに、上記のすべての方法を用いて作成した[123I]oxLDLを用いてin vitroでの性質の確認をLOX-1発現細胞を用いたDose Responseや競合阻害実験をおこない、細胞への取込状態の検証をおこなった。 SPECTを用いたマウスの全身動態や臓器分布の評価の実験も行い、特に小動物用SPECTを用いた全身SPECTにおいてこれまで報告されていない部位への集積が観察されており、今後この部位にどうして集積があるのかの検証を引き続き行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
[123I]oxLDLの標識法の改良やその性質の検証については計画通り進めることができている。細胞を用いてのin vitroの評価も計画通りのものである。試験的にDiI-oxLDLに対して123I標識をする実験も行い、それの細胞での検証も行ったがこれをin vivo用いることにより、ミクロとマクロが同時に観察できるので今後開発を進めたい。 また、小動物用SPECTを用いての実験においてこれまで報告されたことのない部位への集積が観察された。これは、同一個体をヒト用SPECTや空間分解能を疑似的に下がる操作により検出できないことも確認した。 この新しい現象を発見したことにより、計画以上に進展していると評価した。ただし、今後はこの現象の評価や機序についての実験もしていく計画しているため当初計画と多少変更がでてくるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今回発見された、酸化LDLの集積個所はこれまでに報告のない個所であり、前述のようにこれまでのSPECT装置では空間分解能の点から検出ができなかった領域であることまでは判明した。この部位への集積を検証するため以下のような実験を考えている。 1) 本当にそこに集積されるのかの追試 2) どういう機序でそこに集積されるのか? 3) 集積に外因的な条件が必要なのか? 4) 部位より細胞を初代培養することによって、細胞単体でも取り込むのか?それとも他の要因が必要なのか?を検証する。 5) この部位への集積が動脈硬化など酸化LDLが原因とされる疾患とどのように関連しているのか? などを検討していく。そのため、当初の詳細な研究計画と一部変更が生じるところがあるが、本来の目的である酸化LDLの体内動態や分布を調べ動脈硬化等との関連を調べる上では非常に重要な事項であると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度計画していた国際会議への参加を見送ったため残額が生じた。
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