ブラジルには貧困層の人々による、生産を行うことで土地の利用権を要求する「土地なし農民運動」と呼ばれる占拠が随所でみられる。彼らの多くは都市等の労働市場からあぶれた農業非経験者である。 アマゾン河口部のパラ州都ベレン近郊で、土地なし農民として占拠をしている集落を対象に、1.土地占拠による農業生産が貧困改善に役立っているのか、2.森林バイオマスへの影響は、について農学・教育学・環境学の分野から学際的に調べた。 4年間の本研究により、土地なし農民が定住し生産活動を継続すれば森林バイオマスは回復すること、学歴の向上は第二世代より第一世代に顕著なこと、定着年数経過に従い栽培種の多様性を高め恒常的な収穫を得る重要性が示された。 土地なし農民の占拠により、森林バイオマスは減少するが定着によってある程度の回復が見込めるが、定着を可能にするためには農業生産を開始する時点において、結実までの年数や収穫期など、収穫計画を立てられるような知識と情報が必要である。また、占拠の初期段階を乗り越えれば収穫が上がり、教育投資と農業投資が増加することが示唆され、農業投資を行うことでより生産力が高まることが予測されるが、一方教育では第二世代と第一世代の就学年数に有意差は認められなかった。しかし、就学年数の短い第一世代が占拠定住後に通学を開始することで識字率が向上していた。 土地なし農民の貧困改善とバイオマス確保の両立には、いかに彼らが占拠した土地に定着していけるかが重要であり、自家消費作物や商品作物の収穫を如何に上げていくかとともに、摩擦が少なく速やかな土地利用権の確保を可能にする体制の確立が期待される。
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