研究課題
本研究では、ヨーロッパの社会政策が完全雇用への復帰ではなく長期失業者が常態化することを前提として再編され、社会政策に新しい政策原理が備わりつつあると考えており、これまで2年間の研究でそれを確認してきた。平成26年度はドイツとフランスにおいて2回目の現地調査を実施した。ドイツにおいて研究者や行政関係者および利用者にインタビューを行い、ハルツⅣ法による求職者支援に対する批判はあるものの制度としては定着してきた点を確認し、フランスにおいては就労可能性の程度別に用意されている就労支援プログラムのすべての現場を訪れ、就労支援と社会的包摂が融合されている状況を確認した。これは平成25年度に調査したスウェーデンの状況にも似ており、自力で職を得ることができない程度に就労能力が低い人に対する就労を最終目的にした職業紹介や職業訓練による就労支援は、社会的包摂の政策の実践になっていると解釈できる。ただし長期失業者への仕事の提供方法やプログラム利用中の労働者としての位置づけには3か国それぞれで違いがあった。そこで、労働と社会保険の加入の関係に着目して、年金や医療などほかの社会保険の構成との関連ついて研究を広げた。これらの結果については平成27年度に学会報告や論文の形で発表していく予定である。また理論研究の面では、今回の研究で検討したヨーロッパ4カ国(独・仏・瑞・蘭)における雇用政策の違いが、社会政策の発展過程がまっすぐ伸びる階段ではなく螺旋階段のように伸びているという考えを否定しないため、その深化を行った。この違いがEUの社会政策の中で社会的包摂という共通の目的に対する手段の違いにとどまるのか否か、就労が経済的自立の手段のみならず社会的包摂の手段になるという発想での支援が始まったばかりの日本と比較するうえで、さらなる検討が必要である。
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社会政策
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