「限界集落」では様々なコミュニティ機能の低下から地域生活が継続できず、社会的に弱い立場の住民が地域生活から排除される可能性が高まる。本研究では、住み慣れた地域での生活継続を阻害する要因(社会的排除の要因)と地域生活継続可能性を高める方策としての地域住民のエンパワメントの方法の検討を目的とする。 平成27年度においては、平成20年度・22年度・24年度・26年度の合計4回の限界集落における繰り返し横断調査について、分析を行った。すべての調査の対象は、20歳以上の住民全員であり、住宅地図を活用した全戸訪問による配票留置法によって実施した。 「地域の会合に参加しにくい」「自分の意見が地域に受け入れられていない」といった地域からの主観的被排除感に関連する分析を行った。基本的属性との関連の分析の結果、年齢が若い場合には「地域の会合に参加しにくい」という被排除感を感じやすい傾向があり(p<.10)、年齢が若い場合(p<.05)や女性の場合(p<.10)には「自分の意見が地域に受け入れられていない」という被排除感を感じやすい傾向が示唆された。(APASWE2015Bangkokにて発表) 繰り返し横断調査によるデータについて、65歳以上の回答者に関する分析を行ったところ、2009年から2015年にかけて、高齢者の社会参加の場が減少していることが明らかになっている。特に、2009年において活発に行われていたお茶飲み会への参加が大幅に減少しており、同時に、必要な情報の取得ルートとして「地域住民」「家族や親せき」「回覧板」の割合が減少し、行政の広報を頼る割合が高くなっている。この結果から、高齢者にとって身近でインフォーマルな情報源や交流が減少し、公的なサポートへの依存が高まっている様子が示唆されている。(EASP2016Seoulにて発表予定)
|