研究課題/領域番号 |
24603001
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉岡 聖美 筑波大学, 芸術系, 研究員 (80620682)
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研究分担者 |
蓮見 孝 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (60237956)
村上 史明 筑波大学, 芸術系, 助教 (30512884)
五十嵐 浩也 筑波大学, 芸術系, 教授 (80258839)
西尾 浩一 福井工業大学, 工学部, 准教授 (30550561)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 触知 / 緩和ケア / ハンズオン / ワークショップ / 能動アート / ホスピタルアート / 気分評価 / 行動観察 |
研究概要 |
本研究は、触る動作を誘導する「能動アート」の触知効果に着目し、触知性に起因する心理的効果によってストレス緩和ケアプログラムを開発して評価することを目的とする。平成24年度は、「能動アート」の概念を確立するために、STEFを中心とする上肢の動作機能の測定に関わる評価項目および作業療法士からの意見聴取に基づき「能動アート」の触知パターンを分類した。その結果から、最も基本的な動作に関わると考えられる手内筋を使用する動作を用いたプログラムを作成することとした。病院でも特に生活行動が限定され特異な環境である緩和ケアの現状把握のため、国立がん研究センター東病院、東札幌病院、聖路加国際病院、筑波メディカルセンター病院、筑波大学附属病院において視察調査を実施し、看護スタッフとのディスカッションを行った。日本および海外(英国)におけるハンズオン(触って鑑賞する体験型の展示)によるアート展示を体験・視察調査し、アート作品への触る動作の誘導パターンとその内容について確認した。触知パターンの分類に基づく「能動アート」を用いたアートワークショップの実践として、国立がん研究センター東病院と東札幌病院において「ハロウィンアートワークショップ」「クリスマスアートワークショップ」を実施した。参加者について、気分評価や行動観察によって定量的な評価を行った結果、ワークショップ後の気分評価はワークショップ前に比較して有意に改善することを確認した。患者に対する行動観察では、ワークショップでの参加時間の経過に従って、より能動的に制作へ参加するようになり作業に集中する様子がみられた。また、ワークショップスタッフや医療スタッフとの会話が増加したり、硬直していた表情が和らぎ笑顔がみられるような患者の言動や表情が変化する様子を確認した。これらの成果について、論文および研究発表原稿を学術学会に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「能動アート」の触知パターンに基づく概念の確立、病院の現状調査、博物館・美術館でのハンズオン展示における触知誘導の調査、「能動アート」を用いたアートワークショップの実践と評価を行ったことについて成果が得られており、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究成果に基づいて、ストレス環境において必要とされる心理的効果に有効な触知性を導き出すための基礎実験を実施する。得られた結果から、ストレス緩和に関係すると考えられる触知性を用いた「能動アート」を制作し、協力病院において「能動アート」を用いたアート展・アートワークショップを実践して有効性を定量的に評価する。併せて、協力病院の拡充を図る。被災地における視察調査を行い、「能動アート」を用いたワークショップを実施して評価する。また、英国のNorfolk and Norwich University Hospitalのアートコーディネータとミーティングを実施し、連携研究について検討する。研究成果を、IASDR(国際会議)、日本デザイン学会、日本感性工学会などで発表し、学術誌に投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、平成25年度に予定していた病院でのアートワークショッププログラムの試行については、協力病院を早期に獲得することができたため平成24年度に実践可能となり前倒しに実施した。そのため、平成24年度に予定していた基礎実験の一部を平成25年度および平成26年度に実施することとした。これに伴い、基礎実験に必要な研究費約70万円を平成24年度からの繰越金として調整した。平成25年度および平成26年度の研究費使用計画については、主に、基礎実験、視察調査、ワークショップ実践、成果発表に関わる支出となる。
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