研究課題/領域番号 |
24603002
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
池邊 このみ 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (50620366)
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研究分担者 |
草川 功 聖路加看護大学, 看護学部, 教授 (20241052)
安原 喜秀 東海大学, 大学院人間環境学研究科, 客員教授 (50056082)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 被災地 / 文化財 / 生活文化 / 郷土風習 / 景観構造 / 地形変遷 / 鉱物資源 / 交易 |
研究概要 |
本年度は、調査対象地区を被災地の陸前高田市に決定し、陸前高田市の文化財関係者や地元でのヒアリングや、文献収集を中心におこなった。被災地での文化財関係、特に郷土風習や民族学関係、民話、集落ごとの郷土風習の関連のものは、ほとんどが流失されているため、被災地の浸水区域以外の集落などを回り、地道に文献資料を収集した。また、被災集落の古代から現在までの集落ごとの年表などを作成することを目的として、仮設住宅やコミニティセンターなどでヒアリン調査をおこなった。また、盛岡県の図書館や教育委員会に関連文献が少し残されていることもわかり、それに対しては文献を読み込み、関連部分を収集し、整理した。 また、中世城跡跡地や社寺境内地などを中心に、郷土景観としての構造をあきらかにするべく、広田湾の全体からの景観の調査を実施した。 被災地では、まだ、高台移転などの関連もあり、いわゆるアンケート形式での調査が難しいため(住民感情が文化財に向かっていない)、特に地元のキーマンとなる方々を訪ね歩き、25年度に行う予定の本格的な調査に向けた準備資料の作成をおこなった。 資料は、縄文時代から近代までの集落の区域の変遷や、時代ごととの特徴的景観となるべきトピックスや産業とくに、植生と関係のあるウルシや椿、お茶などの産業のはいってきた時期や場所、また、消失した理由などについても把握した。 また、陸前高田市の復興計画や高台移転計画地などについての情報も把握し、今後の当該調査対象地の今後の土地利用計画を把握し、復興後の景観の変化についても把握し、郷土景観の保全に重要な地区など把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画においては、被災地の住民の記憶に関する調査を行う予定であったが、被災地住民の被災の心の傷は大きく、アンケートなどによる把握は難しく、被災以前の郷土景観に関する直接的な思いを把握する方法については、工夫がいることがヒアリングなどにより明確になった。また、現在、被災地では高台移転のための造成が進んでおり、多くの山林が赤裸の裸地をあらわにしている。住民は、仮設から高台移転への思いを強くしていたものの、実際に伐採されて変貌する故郷の土地をみて、不安を抱いている。本研究は、そのような故郷の景観の保全を被災住民の記憶により把握する予定であったが、記憶そのものを住民から引き出すのではなく、写真やその他の資料により把握することに研究手法の一部の変更を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、1300年続いてきた陸前高田市という土地のもつ、地形や自然、歴史的な地形の変遷、生業による過去にあった椿やお茶、漆などのあった被災以前より少し前の時代の景観構造を明確にする。 また、同時に中世の時代に55か所あった城館の時代の地形模型を作製し、三陸海岸の中での広田湾という深い港湾の囲まれた独自の景観構造を分析し、その居心地の良さの要因を明確にする。 また、共同研究者である小児科医による幼児の居住環境としての陸前高田市の環境を分析し、その特性を今後の復興計画に資するべく、分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費については、主に住民ヒアリングに対する旅費と、陸前高田市が1300年、住み続けられてきた要因となる広田湾を中心とした地形と自然条件、地形条件などを模型あるいは、モデルにより立体的にみせるための材料費及びソフトなどの購入費、また、作業費としてあてるものとする。 昨年度分の研究分担者の旅費については、被災地での講演会を予定していたが、高台移転関係などの合意形成等に時間がとられ地元の準備が十分とれなかったため、今年度に開催することとし、繰り越しをおこなった。
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