研究課題/領域番号 |
24603007
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
古川 聖 東京芸術大学, 美術学部, 准教授 (40323761)
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研究分担者 |
藤井 晴行 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (50313341)
柴山 拓郎 東京電機大学, 理工学部, 講師 (80366385)
星 玲子(柴玲子) 東京大学, 総合文化研究科, 研究員 (90291921)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 音楽認知 / 音楽心理学 / 脳科学 / コンピュータ音楽 / 作曲 / デザイン学 / 音楽理論 |
研究概要 |
音楽情動は心理現象であり、その生起の心理学的、生理学的メカニズム関しては現在、数種類の別個の経路が知られている。本研究はこの音楽情動に音楽構造を足がかりにしてアプローチする、つまり音楽構造=音の具体的な組み合わせ、音の形式から心理現象である音楽情動を生成する原理とメソードの開発を行う。 また、本研究の特色は活用や専門分野の異なる、アーティストと科学者が共同し学際的な研究プロセスを共有し、科学的な事実、推論を核に芸術表現にまで研究の領域を広げている点にもある。音楽構造のように実際の物理的な振動、その持続の長さ、強さなどの基本的な単位からできている対象化可能なものとは違い、音楽情動はつかみ所のない扱いにくい対象である。音楽構造から音楽情動を生成するメソードの開発によって、構成論的に音楽情動を対象化、つまり記述可能な構造として扱う事が可能とするモデルを開発する。 そのことは音楽認知の研究として独創的であるだけでなく、今までの音楽技法理論に欠けていた音楽情動を扱う技法を音楽技法に加えることになり、アートの表現方法を大幅に拡張し、ひいては商業音楽分野においてもその知見は重要なものとなるだろう。 また、過去の歴史をみれば音楽による情動操作が政治に利用され、現在においても様々な、意識的なまたは無意識的な音楽による情動操作が社会生活を混乱させてしまっている面もあることは否定できず、本研究の成果はより快適な、公正な社会や音、音楽を含む生活環境の再デザインへともつながっていくだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目標は基礎モデルの導出であった。全体としてほぼ、予定通りの方向に進んでいるが、予期しない発見や行き詰まりにより、内容の軌道修正はあった。 まず、できるだけ音楽の構造的要素を限定したモデル(バージョン)1を作成し、いくつかの仮説を平行して用いながら心理実験によって確かめつつ、徐々に複雑なモデルを導出した。音楽のシンタックスを破壊することによって、音楽の認知、理解が阻害され、音楽情動が起きにくくなる事が確かめられたが、メロディーのグルーピング構造より、大きな単位である拍節構造の破壊によりその効果があることがわかった。年度末からは(誰も知らないようなマイナーな)実際の音楽(Burgmuellerの18曲の練習曲など)を分断する聴取課題の心理実験を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
本来ならば25年度には実際の作曲に耐えうる様なモデルが徐々に完成すべきなのだが、25年度前半まではもう少し、現在の実験をつづける。心理テスト用にWEB入力可能なソフトウェアを開発したので、それを使い100人程度の学生被験者を用いる大型の心理実験を複数回行なう予定である。これらを通し、しっかりと音楽の構造的要素と情動の関係の基礎の部分を見極めたい。その上で、後半にはより複雑なモデル(半分は研究に基づき、半分は実験的なもの)を用い、構成論的に仮説を検証していく作業に入りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
音楽を聴取するような心理実験においてはWEBを使い多数の被験者を用いる方法が 有効である事がわかった。主に、このようなインタラクティブな聴取実験プログラムの開発に 資金をつかい、そのインタラクティブな聴取実験プログラムの発展形として、当初から予定されていた創作用のプログラムの開発とそれを使った制作と評価を行ないたい。そして、これまでにまとめた研究成果を研究論文として発表するための投稿費用、旅費も計上する。
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