インタビュー調査から分かった欧州におけるネットワーク型デザイン開発の特徴は、サービスデザインやユニバーサルデザインに係わる開発に於いて特に発展していることであり、これは、サービスに関連する事業が多くの業態にまたがることが多いことや、ユニバーサルデザインにおいてはオープンソースの利用がデザイン開発に有効に働くことがその理由として挙げられた。その中で、取り扱う事業がパイプライン・ビジネス(製品を売り、お金を得る)か或いはプラットフォーム・ビジネス(プラットフォームを作り、2者間で運営し両者からお金を得る)により考え方が異なることが指摘され、社内にプロセスやデザインを実際に管理するマネジャーの存在有無や、デザインマネジャーの地位(生産マネジャーや製品開発マネジャーの下位に位置づけられることが多い)もネットワーク型のデザイン開発の運用では影響が大きいことが分かったが、社内デザイナーがそもそも少ない欧州型の企業ではデザインコンサルタントとネットワークを組むことは通例であるため、マネジャーの意志決定が特に重要となる。また、ドイツの自動車産業など高度に技術が先行している産業では、ネットワークそのものが開発の貴重なノウハウとなっていることから、どのようなネットワークが構築され運用されているかは秘匿される傾向があることが分かった。具体的なネットワーク構築の内容は不明であったが、ネットワークを構築する際に問題になることは知財権と情報漏洩であり、その問題によりネットワーク構築に支障をきたし、社外とネットワークを構築することが困難となっている状況も浮き彫りになった。その為、ネットワークの構築手法として、社外であったものをM&Aなどにより社内に取り込み、社内ネットワークを拡充する方法がとられている事も明らかとなった。
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