(1)昨年度に引き続き,主題的関係に基づいてあらたな状況を生成する方法論の構築を行った.本年度は,まず,主題的関係を用いて記述された既存の状況を組み合わせる方法について検討した.具体的には,(1)合成される主題的関係の間に何らかの類似性が必要である.(2)一方で,差異性も必要である.(3)合成される主題的関係は,異なる種類のものであることが望ましい.(4)合成される主題的関係の説明概念(2つの概念間が主題的に関係していることを説明する概念)が異なっている方がよい.という考え方を示した.つぎに,新規性の高い状況を生成するためには,文脈の異なる主題的関係を合成する方法が良いと考え,そのためのデータベースを構築した.具体的には,(1)主体の属性(年齢,性別等)の違い,(2)地域の違い,(3)時代の違い,などに注目し,それぞれの文脈における状況を主題的関係として抽出した.そして,文脈の異なる主題的関係を合成するケーススタディを試み,新たな状況が生成できることを確認した.これらの成果は,インドで開催された国際会議で発表するとともに,国際ジャーナルに投稿し,現在審査中である. (2)本研究の最終目的である,工業製品の内側(潜在機能による新たな機能の推論)と外側(新たな状況の生成による新たな機能の推論)の双方のアプローチを統合するための方法論の検討を行い,両者を同一の形式で記述することにより,効率的に統合できる可能性を見出した.その知見は,書籍「創造デザイン工学」において公表した.
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