研究課題/領域番号 |
24603015
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐藤 優 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (20093958)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | デザイン / 芸術諸学 / 都市計画・建築計画 / 都市整備 / 環境政策 / 景観 / 野外広告 / まちづくり |
研究概要 |
本研究では、都市景観における屋外広告物と公共サインの誘導方法を検討する。平成24年度は、以下のとおり実施計画に掲げた項目についていずれも予定どおり実施した。 1)福岡市が実施した屋外広告物全件調査の結果、大型屋外広告物11473件のうち違反または無届の屋外広告物が65%(7480件)にのぼることがわかった。その分析を進め、対策を検討している(継続中)。また、その内容を現地の状況に沿って精査するため、九州大学移転に伴って屋外広告物の乱立が目立つ伊都キャンパス周辺沿道を対象とし、屋外広告物67件の表示内容を確認した。その結果、文字数65文字以内が90%であることがわかり、文字数30文字前後が多いことがわかった。判読可能な情報量と表示サイズの理論値から、文字高300mmを15文字表示可能で、補足する情報を加えて65文字を表示できるw4100×h1100mmと、文字高200mmに対応するw3200×h800mmの2種類の表示板サイズと、15文字、30文字、65文字の情報量を変えた10種類の原寸模型を製作し、現地仮設調査を行った。調査にあたっては、九州大学伊都キャンパス周辺を対象とする学官民合同の研究会である「タウンオンキャンパスまちづくり推進会議」に協力してもらい、報告会も行った。 2)佐賀県、宮崎市、福岡県、富山県、および各地の屋外広告物ガイドラインの内容を整理し、検討した。また、ソウル、長崎、広島、福岡などの国内外の研究者および行政との意見交換を行った。 3)都市部における情報の増大および多様化に対応した公共サインのあり方を検討し、福岡市天神地下街でQRコードを用いた新世代型サインの試作実験を行った。 実施計画として掲げた項目について、以上のとおりいずれも予定どおり実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)九州大学伊都キャンパス周辺の屋外広告物の表示内容を調査し、文字数65文字以内が90%であることがわかった。65文字は瞬間的に判読できる情報量ではないが、既存不適格を15%以内にできればその規定を導入しやすいので、広告主を説得するための重要な目安になることがわかった。 2)現地で原寸大の屋外広告物を10種類仮設して調査を行った結果、評価が悪い方に変わる境界を確認でき、郊外型の屋外広告物の場合は上下3段以上になると景観上好ましくなく、w4100mmでは左右2列になるとやや評価が落ち、文字数30文字程度が評価が高いことがわかった。想定した理論値に対する評価が明確になり、きわめて具体的な指標を得ることができた。 3)携帯端末に対応するQRコードを用いた公共サインの社会実験を行った結果、情報の階層化を的確に行うことによって検索時間が短くなり、利用者(被験者)の評価も高く、実用面でも有効であることがわかった。 4)韓国ソウル市城北区役所でアジア景観デザイン学会を主催し、研究発表を交えた充実した意見交換を行った。研究計画では研究者の意見交換にとどめる予定だったが、景観に関する国際的な学会を開催することができ、国際的な研究者および行政の意見交換を行うことができた。 5)各地の屋外広告物ガイドラインおよび先行研究を検討した結果、根本的な視点の数点に大きな疑問が生じ、さらに広告主と行政を対象とした基礎的な資料がないことがわかり、資料を整理し、「屋外広告のテキスト」をまとめた。以上5点が当初の計画以上に進展した点であり、特に3年目に48ページの報告書をまとめるとしていたが、1年目で66ページのテキストをまとめることができた。予定以上の進展により、3年目に予定していた報告書をより深化させることができる。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に指導方針をまとめた成果をもとに、2年目以降はさらに広くこの成果を活用できるようにするため、業界および行政対象の研究会を開催し、テキストも完成度を高めたい。 3年目に計画していた報告書は、さらに内容を深めることが可能になり、実現可能な行政への提言を行う内容とする。そのため、平成25年度は、行政および研究者との意見交換を密に行い、学会発表および研究会を行う。 韓国および中国にもこの研究成果を適用できるかどうかを各国の専門家に打診し、不足部分を充当し、3か国で活用できる誘導指針を求めることを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、研究発表(福岡ー名古屋=開催場所によっては変更する可能性有)、研究会招聘(富山ー福岡)、アジアハビタットとの意見交換(福岡ー北京)の旅費3回分と講師謝金を使用する予定である。 物品については消耗品のみとし、平成24年度に購入した物品を活用するので新規には要求していない。平成24年度の研究成果の学会発表と研究者および行政との協議や研究会を中心に研究を進展させる。
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