研究課題/領域番号 |
24603015
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐藤 優 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (20093958)
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キーワード | 研究成果公表 / 研究成果知見応用 / 国際情報交換 / 景観誘導方針成果確認 / 景観観光対策確認 / デジタルサイネージ調査 |
研究概要 |
都市景観における屋外広告物と公共サインの誘導方法を検討している。本研究は、屋外広告の諸問題に取り組んできた長年の基礎研究を総括し、現場で理論的に導かれた値を適用して実用の可能性を探る現場実験と、今後のデジタルサイネージの可能性を検討する現場実験を加えて、研究の社会的適用と施策への反映を意図した応用研究である。 平成24年度は、2つの実験を行い、さらに従来の研究をまとめて行政及び広告主向けの簡潔なテキストをまとめた。その反響は大きく、屋外広告行政の先進地として知られる宮崎市や長崎市、倉敷市など多くの自治体の関心を集め、福岡県のガイドライン作成に反映させた他、福岡市や北九州市でも検討を進めている。 平成25年度は、研究成果の伝達と応用の可能性を探り、研究実績は以下のとおりである。1)研究報告会を平成25年4月12日に九州大学大橋サテライトで開催した。参加者は屋外広告関係の研究者、業界、行政、学生等約50名であった。2)平成24年度の実験結果から導かれた屋外広告の適正値を、九州大学伊都キャンパスに接する九大新町で企業の協力を得て屋外広告物を実用化し、妥当な基準であることを確認した。3)韓国ソウル市で金英美城北区都市デザイン室長と協議し、資料確認と現地視察を行い、屋外広告物誘導の成果を確認した。4)韓国釜山市で李明姫東西大学副教授と協議し、甘川文化村地区における景観誘導の実績と観光対策としての効果を確認した。5)研究成果を「福岡県の屋外広告物ルールと適正化方針」に応用した。6)平成24年度の実験で得られた知見を宮崎市・地方自治機構「デジタルサイネージを活用した公共情報システムに関する調査研究」報告書(委員長:佐藤優)に反映させた。平成25年度の実施計画として掲げた項目について、以上のとおりいずれも予定どおり実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度は、当初の計画どおりに進展している。 1)従来からの基礎研究と本研究による現場実験から導かれた理論値を実環境において適用し、一般市街地における屋外広告物誘導に有効であることを確認した。2)福岡県の屋外広告物ルールと適正化方針を策定するにあたって、本研究によって得られた知見を反映させ、本研究の目的のひとつである応用化を達成した。しかし、上記1)で確認された望ましい理論値の一般適用までは至っておらず、今後の課題として残っている。3)ソウル市と釜山市の現地視察と専門家との協議の結果、近年の屋外広告物誘導によって秩序とにぎわいのバランスのとれた良好な景観を形成するに至っていることと、釜山市甘川文化村地区においては景観誘導が観光客の増大にもつながっていることを確認した。また、福岡市を中心に従来行ってきた景観誘導の手法とは異なる韓国独自の手法の有効性も確認できた。4)平成24年度のQRコードを用いたデジタルサイネージの現地仮設実験によって若い人々に対しては有効であることが確認されたが、平成25年度に全国の自治体が導入しているデジタルサイネージの実態を調査した結果からは、さまざまな問題から有効に機能していないことがわかり、技術的及びコンテンツの問題を把握した。相反する結果が出たので、今後、防災や交通などの特定の目的に絞るか、あるいはコンテンツの見直しをはかるか、などの課題を明らかにした。 以上のとおり、研究成果の公表や適用及び国際情報交換については予定どおりの達成度が得られたが、施策への応用や将来の屋外広告を担うと思われるデジタルサイネージに関してはまだ十分な達成度を得ているとは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本研究の最終年度にあたるため、以下の研究推進計画を立てている。 1)平成26年度は、専門家による屋外広告計画・設計、指導面、実績に関する検討会を開催し、屋外広告研究及び指導方法に関する進展を確認する。2)実現可能な行政への提言を検討し、従来からの基礎研究を社会の発展に役立てることを目標として成果のとりまとめを行う。3)平成23年に日中韓の専門家の協議によってアジア都市景観賞の評価基準を検討し合意に至ったが、アジアの景観を評価する共通の基準を得ることが可能かどうかを再度検討し、屋外広告物についても本研究の成果をアジアの景観先進国で活用できる可能性について検討する。4)研究成果報告書をまとめ、研究成果報告会を開催する。 本研究は、昭和25年以来のわが国の屋外広告物誘導の背景となってきた考え方を総括するものであり、実践的な研究であることに特徴がある。本研究をとおして、これまでの課題と今後の施策面への提言ポイントが明らかになり、さらにデジタルサイネージ等の新しいメディアへの対応の可能性が見つかることを期待している。 次年度の研究費の使用計画は以下のとおりである。屋外広告の最先端の研究者である研究協力者2名を招聘し、研究成果の確認し応用の可能性を検討する検討会を開催する。3年間の研究成果をまとめた研究成果報告書を印刷し、地方自治体や屋外広告関係の専門家に配布する。研究協力者2名を招聘し、将来への提言を含む研究成果報告会を開催する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に検討会を予定していたが、平成26年度前半に延期した。そのため、招聘する講師の旅費と謝金が繰り越しとなった。また、物品費として大型プリンター用紙の購入を予定していたが、平成25年度は前年度の残余で足りたため、平成26年度購入とする。 平成25年度に予定していた屋外広告物の専門家を招聘しての検討会を平成26年度前半に開催する。また、招聘する専門家は当初予定で1名としていたが、内容の充実をはかるため「屋外広告の知識」の執筆者である西川潔特命教授を筑波大学から追加招聘する。
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