研究課題/領域番号 |
24603017
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石井 明 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (80325571)
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研究分担者 |
東 大輔 久留米工業大学, 工学部, 准教授 (20461543)
竹之内 和樹 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (90207001)
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キーワード | 地面効果 / デザイン / 風洞試験 / CFD / 迎角 / 揚抗比 |
研究概要 |
本報告では風洞試験や空力シミュレーションを用いて行った揚抗比などの空力特性に優れる基本デザインの研究結果を報告する。 空力性能調査に用いた風洞試験装置は日本自動車研究所(JARI)から久留米工業大学に移設したゲッチンゲン型(回流式)風洞である。風洞試験では模型に働く空気力の測定とタフト(気流糸)による流れの可視化を行った。 CFD(Computational Fluid Dynamics)システムには、CRADLE社のSCRYU/Tetraを用いた。 新たな地面効果機のデザイン展開を進めるにあたり、2つの基本形状の空力性能を調査した。一つは低速な流れ場で良好な空力特性を示すE193翼型断面を有するモデルで、翼弦長は250[mm]、全幅は200[mm]、アスペクト比は0.8である。もう一つは低速高迎角時の失速特性に優れるデルタ翼モデルで、米国のスペースシャトルの主翼と同じ後退角45°を有し、全幅は400[mm]のモデルである。なお、風洞試験用モデルはCFD解析に用いる3D-CADデータから直接Roland製3DプロッタMDX-40Aで発砲材を切削して製作した。 地面効果の得られる高度におけるE193翼型モデルとデルタ翼モデルの各迎角に対する揚抗比の風洞試験を行った。迎角(Angle of Attack:流れに対する翼弦の角度)が40°というケースは現実的ではないものの、E193翼型モデルが翼端渦とアスペクト比の影響で迎角35°まで明確な失速をしなかったため本試験では40°までデータを取得した。ただ通常の航行では迎角は5°~10°までを想定しており、その範囲で見るとE193翼型モデルの揚抗比の最大値は5.0。後退角45°のデルタ翼モデルの揚抗比は3.0程度である。したがって、高いエネルギー効率を求める本プロジェクトではE193翼型モデルをベースにデザイン展開を進めることにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
風洞試験でエネルギー効率が高いと判断したE193翼型モデルを機体の胴体デザインのベースにし、さらに左右に主翼を伸ばした試作モデルを作製した。翼だけでなく、胴体の断面もE193翼型なので胴体でも揚力を発生するリフティングボデーである。風洞試験では十分な揚力が得られることを確認しており、現在はテスト飛行に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
地面効果翼機は、波の穏やかな湾や入り江の多い我が国の地形に適したエネルギー効率の高い移動機器であり、今回はそのデザイン展開と実験を行った。事前に行った風洞試験で高い揚抗比を示したE193翼型モデルを機体胴体のベースデザインとし、さらに左右に翼を伸ばした試作機を製作した。今後は、試作機のテスト飛行を行いながら安定して飛行でき、未来を感じさせる魅力的なデザインに発展させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
デザインモデルを制作依頼する予定であるが、実験の手順を考慮しつつ形態が変化するモデルとなるため、図面作成に時間がかかるため。 当初は機能モデルとスタイリングモデルを個別に作ることを考えていたが、できれば実験とスタイリングの両方を満たす同一モデルにすることにより、コストを削減したいと考えている。
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