最終の26年度は、第一に重要伝統的建造物群保存地区にある住宅などの築後年数の長い経年住宅の住民に対するインタビュー調査、第二に建材メーカーに対するインタビュー調査、第三に作り手としての建築士へのインタビュー調査から、住宅の魅力の設計手法を明らかにする計画であった。第一の調査については、重伝建地区などにある築後50年以上の住宅の住民を対象に、要素というよりも住宅全体として魅力を見出している様子や建具・柱梁などに価値を感じている様子を明らかにするとともに、住む上での手間や負担の内容、さらには、住宅の寿命感や子世代への引き継ぎ意識などを解明した。第二の調査は、予備調査の段階で建材メーカーよりもその利用者である住宅メーカー側から調査する方がより建材に対する要求事項が大きいと判断し、住宅メーカーへの調査に変更して、住宅性能としての長寿命への対応方法などについて調査を行った。第三の建築士へのインタビューでは、長寿命化対応の設計手法や設計士としてのこだわりなど焦点を当てて、調査した。住宅メーカーへの調査では、建てたときの状態をなるべく維持すること(メンテナンスの容易さ)と、家族構成やライフスタイルが変わったときに対応すること(リフォームの容易さ)を2本柱にしていること、さらに、一部の住宅メーカーでは、保証やセミナー開催など継続的なサポート体制を3本めの柱にしていることが分かった。建築士への調査では、自然素材の利用とリフォームへの備えに関する設計手法が多く挙げられた。但しその一方で、長寿命に対して否定的な考えを持つ建築士もいることが分かった。
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