研究課題/領域番号 |
24603023
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
酒井 孝 成蹊大学, 理工学部, 教授 (50336517)
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キーワード | フラクタル / 癒し / 陶器 / FFT |
研究概要 |
昨年度の研究実績にもとづき、陶器表面性状の定量評価を行った。従来手法では、測定範囲が微小領域であることや測定間隔が広いことから、「手触りによる癒し効果」の検証に対してうまく評価できなかった。したがって、今年度は、解析結果の信頼性を高めるために、広範囲で高精度な凹凸プロファイルを作成した。そのデータをもとにしてFFT解析およびフラクタル解析を行い、高精度な癒しの定量評価を行い、以下の結果を得た。 (1)高精度なFFT解析の結果から、人の手によって作られた陶器が人に与える癒し効果は高く、機械的に作られた陶器が人に与える癒し効果は低い。また、製作者の力量によって陶器の癒し効果に違いが現れ、素人が作ったものよりも有名陶芸家が作ったものの方が癒し効果が高いことがわかった。 (2)人の手によって作られた温かみを感じられる陶器のフラクタル次数は、触覚を感じられる巨視的範囲においてD=2.63付近に集中することがわかった。 (3)有名陶芸家作の陶器の定数X=0.86、D=2.61に対し、市販の一つの陶器の定数X=0.72、D=2.61となり、癒し効果に大きな違いがある二つの陶器から同じフラクタル次数が現れた。この二つの陶器は表面性状に大きな違いがある。有名陶芸家作の陶器は連続的な表面性状をしているのに対し、市販のものは角ばった、いわば断続的な表面性状をしている。このことから、癒し効果を定量評価するためには陶器の高さデータを座標的に捉えるだけでなく、連続的な形状としてとらえる別の手法を考案することも必要であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度~平成26年度の研究課題は主として以下の3点であり、平成25年度内において、(1)についてはおおむね完了、(2)および(3)は現在進行中であり、総合的に評価して「(2)おおむね順調に進展している。」と判断した。 (1) 24年度に作成したプログラムを用いて陶器表面の高精度なフラクタル解析を実施 →これまで平面内問題であったボックスカウンティング法を立体問題に拡張した解析プログラムを使用して解析を行った。 (2)24年度に測定した触針式粗さ計から得られた凹凸プロファイルのFFT解析 →当初の計画どおり、縦横150マイクロメートル間隔でそれぞれ200箇所の線分粗さを測定し、30ミリメートル平方の範囲の陶器表面の凹凸データを収集した。 (3)フラクタル解析、FFT解析結果のまとめ、および考察 →これまで得られたデータをもとにした考察を行っている。今後はさらなる解析データの拡充を行い、その結果を考察内容に反映する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までおおむね順調に進んでいる。当初の研究計画書の計画に従い、平成26年度は以下の2点のデータ拡充を研究課題とする。 (1) 24年度に作成したプログラムを用いて陶器表面の高精度なフラクタル解析を実施 (2) 24年度に測定した触針式粗さ計から得られた凹凸プロファイルのFFT解析 さらに平成26年度は本課題の最終年度となるため、以下の1点のまとめに関する課題も行う。 (3) フラクタル解析、FFT解析結果のまとめ、および考察
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品購入に関する端数である。 消耗品として支出する。
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