院内助産システムにおける空間について、建築計画上の考察はこれまでほとんど行われていなかったため、空間整備について分析、考察を行い、今後の病棟改築や新築の計画、設計に資する基礎資料を構築することが必要とされている。これに対して平成26年度の研究は、空間の果たす役割の重要性がより多く指摘される院内助産を取り上げ、医療施設の事例を対象に、既設の産科空間や助産所空間との関係性について類型化し、各類型の特徴を整理して計画の実態を把握することを目的とした。 前年度医療施設において実施した、空間計画上の要点と院内助産に適した空間構成とするための配慮に視点を置いた現地調査とヒヤリングに基づき、分娩空間の類型、環境改善事例、施設規模や特徴等を把握した。とりまとめた内容は次のようである。1)分娩空間を規定する条件を導出し、これに基づいて分娩空間を6つに類型化した。2)各類型に対応する4つの室形式を把握した。3)4つの室形式のうち、産科で近年導入されるようになったLDRは医療と居住性双方に配慮されており、院内助産でも広く用いられていた。4)分娩終了後分娩空間を病室として使用する院内助産固有の空間利用がみられ、今後の有効活用も考えられた。5)産科から空間的に独立するなど、院内助産システム推進において助産師の主導性を高めた空間を創出するには、一定の医療施設規模の必要とされる傾向がうかがえた。6)院内助産に適した空間構成とするための配慮は、家庭的居住環境を創出するための工夫に重点の置かれる傾向があった。
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