研究課題/領域番号 |
24603030
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
田中 一成 大阪工業大学, 工学部, 教授 (10330789)
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研究分担者 |
吉川 眞 大阪工業大学, 工学部, 教授 (80116128)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | GIS / バッファー・ゾーン / 植生 / レーザー測量 / 視線遮断効果 / 世界遺産 / 熊野古道 / モデル分析 |
研究概要 |
今年度は最初に,本研究の対象地区である紀伊山地熊野古道について,樹木群を中心にバッファー・ゾーンのモデル化を検討した。このモデル化にあたっては,まず対象地区の植生とその分布について関連する資料の収集を行った。この結果をもとに,樹木量,森林空隙率,樹幹量,枝下部分高さ等の仮データを各植生について設定し,その代表的植生であるスギ・ヒノキ・サワラ植林,アベマキ―コナラ群集,モチツツジ―アカマツ群集について仮説的モデルを作成した。 次に,3次元空間基盤作成のための基礎データを得るため,実際の植生に対して調査測量を行った。主にレーザー測量を用いて,植生状況が近いと考えられる高野山町石道の周辺を対象とした。ここでは,各植生モデルについて各種の物理的な基礎データを得ることを目的として,森林現況のほかに各地区の樹木サンプルデータを計測機器や写真によって得た。本調査は,2012年10月5日に6地点において実施した。これらの結果は,CAD/GISおよび専門ソフトウェアを用いて空間データ化を行った。 現地調査に基づいた空間データを用いて,樹木等配置の連続性に対して現実に対応したモデル化を行った。このモデル化に際しては,各種の指標値から具体的に空間における関係式を導くこと,また,このことによって仮説的モデルとの関係検討を行い,最終モデルを設定することを目的としている。 最終的に,仮説的モデルと現地調査の結果をもとに現地調査結果との照合等を行い,その結果,特に地形と樹木形状の関係,植生奥行きの把握方法,道路等による連続性の分断など,新しい指標値について検討を行う必要性を見いだしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モデル化にあたって,現地調査による樹木等配置の連続性によるモデルとの整合性がとれず,モデル作成において他の要因が関係している可能性が明らかとなっている。その可能性として,地形と樹木形状の関係,つまり地形や地盤の性質による樹木形状の違い,植生奥行きの把握の方法,道路等による連続性の分断の測定方法などが考えられ,これらの新たなデータ取得方法とモデル化が課題となっている。 GISデータ構築にあたっては,モデル化に必要な最小限のデータを層化抽出することが必要であり,上述の課題を解決することが急務となっている。現在はこれに関連する情報を収集すると同時に,試行を繰り返している。
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今後の研究の推進方策 |
視線遮断効果に関するモデル化と調査結果との整合性に係る検証を進めている状況にあるが,さまざまな分野のの研究成果等の情報を収集しながら,これを継続して進める。同時に,この分析に際して既に一部をデータベースとしている対象地区について,現地測量等により具体的なGISデータを取得する。最終的には視覚的な事象に関する分析結果を発表すると同時に,これによりバッファー・ゾーンを設定するための根拠データの取得可能性,妥当性について検討,提案を行う。 さらに,視覚以外の物的・環境的要因,社会的・人的要因など,その他の設定された要因から,バッファー・ゾーンの遮断効果についての検討を行い,さらにこれらに関する基礎データについて収集を行う。次いで,対象地区において視線遮断効果と同様のバッファー・ゾーンの設定と根拠データを取得する。ここでは,既に収集しているさまざまな保全地区・施設に関する調査結果等の情報を収集し参考とする。 以上の結果をもとに,対象地区についてのデータベースを構築すると同時に,他の対象地区についての検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,樹木群を中心としてモデル化手法を検討するための基礎データの取得検討を行っており,このためのデータを外部委託により取得した。しかし,上述のようにモデル化とデータベースの整合がとれず現在検討を行っており,対象地区に対しての本調査には至っていない。このように,調査は第一段階にて中止しており次年度繰越金が生じている状況である。 具体的には,予定していた本調査測量にかかる設備備品と消耗品,および調査のための旅費,人件費,外部委託費等について,平成25年度に繰り越している。 平成25年度は,この状況を打開するために,現在モデル化に際しての課題と考えられる要因について,各分野・現地の研究者や,既研究発表等からの情報を収集する。このために必要な旅費等について,他の予定経費の一部を使用する予定である。 モデル設定後には予定通り現地において検証のための測量調査を行うが,この実施のために予算を用いる予定である。また,この予算を用いてGISによるデータベース化を行う予定である。 次の段階として,その他の要因からなるデータを取得するため,気温や音量等の基礎的物理的データの取得と,これを裏付ける心理的データのためのアンケート等の調査実施に必要な人件費や謝金について使用する予定である。
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