研究課題/領域番号 |
24603032
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研究機関 | 神戸芸術工科大学 |
研究代表者 |
曽和 具之 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 准教授 (00341016)
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キーワード | ドキュメンテーション / ワークショップ / 協調学習 / ムービー / マルチメディア |
研究概要 |
平成25年度においては、以下の3プロジェクトについて実地検証を行った。①宮城県石巻市、岩手県陸前高田市および岩手県山田町における、子どもたちを主体としたまちづくり活動のドキュメンテーション、②ブロック玩具を用いた、社会人向けの研修用ワークショップにおけるドキュメンテーション、③神戸芸術工科大学プロダクトデザイン学科平成25年度新入生フレッシュマンセミナーにおけるドキュメンテーション。いずれの地域においても、各活動毎にリアルタイム・ドキュメンテーションを行い、関係者との共有を図った。また、作成したドキュメンテーション・ムービーの公益性を向上させるための、再編集システムを導入し、インターネット上でのドキュメンテーション公開時に、当事者には経験の反芻としての役割を果たすように、かつ、一般視聴者には、活動内容の広範な理解と認知に寄与するドキュメンテーション・ムービーに位置づけられるように改良した。前年度までは、その場で編集したドキュメンテーション・ムービーをインターネット上で共有していたが、平成25年度においては、その場でリアルタイムに編集・共有したドキュメンテーションをバージョン1として、リフレクションを行った後、参加者、主催者の意見や感想などを元に再編集したものをバージョン2、さらに、一般視聴者にも理解が深まるようにテロップや慣れションを入れ込んだバーション3として、段階的に制作・共有することで、ドキュメンテーション・ムービーの制作メソッドおよびリテラシーについての基本指針を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各プロジェクトにおける成果は、以下の通りである。①東日本大震災から3年が経過し、子どもたちの暮らしにも少しずつ安定感が表れてはきたが、町の復興に関しては遅々として進まない部分も多く、活動のドキュメンテーションにおいて、これまでの復興という視点に加え、より子どもの視点に立ったソフトウェアとしてのまちづくりを考える子どもが増加していった。この中で、宮城県石巻市に関しては、子どもセンターが完成するなどハード面で大きな進展が見られ、ドキュメンテーションで詳細に記録を共有することで、子どもたち自身の活動に対する自負を高める結果を得た。今後は、活動の内容に絞ったドキュメンテーションと、新しく加わった子どもメンバーとの経験の共有に関するドキュメンテーション手法を確立することが必要とされる。②社会人向けの研修におけるドキュメンテーション手法は、参加者の経験の振り返りと共有の2視点から編集プログラムを抽出することができた。ワークショップのスケジュールの中にドキュメンテーション・ムービーの上映やリフレクションを入れ込むことで、体験の振り返りをより内発的に進めることができた。今後は、より広範な共有方法についてのシステム作りが必要とされる。具体的には、ドキュメンテーション・ムービー・バージョン2の制作段階において、参加者からの意見を広範囲に集約するネットワークシステムやSNSとの連携による、リアルタイムな再編集システムの指針を立てることを平成26年度の基軸としていく予定である。③新入生におけるドキュメンテーション作業については、平成25年度においては、学生のドキュメンテーション経験度別にムービーを作成し、習熟度と体験の共有の関係性について分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては、研究最終年度に当たるため、以下の項目について研究を遂行する。①ドキュメンテーション・ムービーのバージョンに合わせた公開方法の確立、②ドキュメンテーション・ムービー制作手法およびリテラシーに関する指針作成。①においては、平成26年度においては、SNSを利用した広範囲な情報公開を可能にするとともに、参加者にのみ公開される情報、参加者も再編集可能な情報などに情報公開のレベルをもうけ、ドキュメンテーションの汎用性をはかることを目標として掲げる。課題としては、動画として保存される大容量データのデータベース化、マルチタスク化、冗長や断片化、ウィルスなどによる破壊に対する情報欠損への対策などがあげられる。②においては、撮影・編集を行う学生および専門スタッフへの教育を目的としたマニュアルあるいは指針書制作を行うことを主目的とする。制作媒体としては、映像あるいは電子書籍など、ネットワークを通じて共有しやすいものにすることを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
持続可能なスタッフ育成システムの構築計画を早めたため研究費の前倒しを行い、ほぼ計画通りに予算執行したが、わずかに残予算が発生した。 データサーバの維持(平成26年度分)を行う。
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