研究課題/領域番号 |
24604001
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
原田 伊知郎 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特任講師 (00361759)
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キーワード | メカノトランスダクション / 組織硬化 / 組織物性 |
研究概要 |
本研究の目的は、癌組織の悪性化や心リモデリングのような組織硬化をともなう疾患に対して、細胞の周辺環境物性認識に対する感受性が長期にわたり徐々に変化することで細胞機能の変容が生じる機構の解明を目指すものである。一過的な機械的な刺激に細胞が応答する分子機構の存在は示されつつあるが、何故その短期的な応答性が長期にわたり徐々に細胞の性質の変化を誘導するのかという問題は不明である。本研究では足場物性に依存した長期的なシグナルプロファイルの変化を解析することで、細胞と足場との力学的相互作用が引き起こす細胞機能変容の幾序を明らかにするとともに、組織の硬化が関与する疾患との関連性について考察を行うものである。 これまでに、細胞の足場物性の違いは細胞の接着斑に局在化する分子群のターンオーバーの変化が様々な細胞種類においてどのよう異なるのか検討を行ってきた。その結果、足場が柔らかいときに生じる分子の速い分子のターンオーバーの副産物として生じる断片化した接着斑分子の残留物が、初代マウス組織においても確認された。この現象は細胞外マトリクスが豊富な組織に含まれる間葉系細胞において顕著であることが分かった。特に胎児や新生児マウス組織では成体より顕著であることから、組織のリモデリングが活発な場合において接着斑分子の発現プロファイルが変更を受ける。このような現象は、細胞の置かれている環境の物性に依存すると考え様々なゲルを作成し初代細胞、ラインの細胞を軟らかい培養基板に培養し解析を進めてきた。ところが着斑分子のターンオーバーとプロファイルの変更は単純に足場の弾性率だけではなく、細胞が接着している基板表面の微細な構造も関与していることが明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織解析の結果では炎症反応と接着斑タンパク質の断片化との強い相関が観察された。この結果は組織の物性変動に伴い接着斑分子のプロファイルが変更を受けていることが強く示唆された。平成25年度では、そのような組織変容を生体外培養系において再現すること行ってきた。その基盤技術を確立することを目的に、まず従来のアクリルアミド培養用ゲルの改良を行い、他研究者にもその有用性について検討を行ってもらった。その結果、これまでに多く用いられてきた培養系の問題点である、弾性体であるアクリルアミドゲル上に固定化された細胞外マトリクスが細胞の力で剥がされてしまうが、これまでに作成したゲル培養基板ではそれが克服されていることが検証され、細胞の張力イメージングや生化学実験によるタンパク質解析も可能であることを実証した。これにより、本研究計画通り、基盤技術の確立しゲル上に培養し続けた初代細胞・ライン化細胞の長期シグナルプロファイルの解析が可能になった。しかし本研究の出発点である、足場の物性変化に伴う接着斑分子のターンオーバーについて、本培養基板ゲルと軟らかいシリコン基板上にて対比を行ったところ、同様の弾性率を有しているにもかかわらず、シリコン基板上においては軟らかい足場上におけるターンオーバーの促進が生じないことが明らかになり、これまでに開発してきた培養基板ゲルとの本質的な物性差異、構造について検討する必要が生じた。また、昨年度の課題であった断片化タンパク質を遺伝子導入した場合のその分子群の変動のイメージングは達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで、細胞の接着点にかかる力に依存して機能的な部分断片化するタンパク質として数種の物が明らかにされている。しかし、そのような現象は培養細胞でのみ確認されていることがほとんどであり、生体組織中での機能との相関性は明らかになっていない。 具体的な実験として対象とするものは、開始時点においてはプロファイルが明確なライン化された癌細胞を用いる予定であったが、生体組織中において炎症反応とリモデリング中組織において、接着斑分子の機能的断片化が顕著に観察されたため、 最終年度は度以降は組織の硬化現象に着目した組織のリモデリングと足場依存的な長期プロファイル変更について解析を行う。特に組織硬化を伴う組織として、心筋梗塞や、過剰運動、運動疾患モデルマウスの筋組織について引き続き検討を進める。また、これまで培養基質の物性が軟らかいために、接着斑分子の機能的断片化が生じていると考えていたが、平成25年度においては単純な弾性率の差異ではなく、培養基板のミクロな構造をも反映していることが示唆されてきた。そのため、最終年度においては、アクリルアミドゲルだけではなく異なる物質にて培養基板を作成し、培養細胞がどのような周辺物性を検出しているのかその詳細について解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では予定していた細胞の蛍光ライブイメージングに至らなかった。その大きな理由は昨年度までに本研究に最適な装置、及びその部品が平成26年の4月以降に入手可能であることが分かったため。 平成25年に調達・達成できなかった細胞の蛍光ライブイメージングに必要な顕微鏡部品、及びその解析システムのセットアップに用いる
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